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程なくして玄関先に戻ってきた地蔵は川田に警察を呼ぶようにと伝える。
「え? 警察?」
「せや。この階の、ちょうど404号室の壁に仏様が眠ってらっしゃるんや」
「え」
あの女性曰く、ちょうど十数年前にこの部屋を将来を誓い合った男性と一緒に借りていたらしい。順風満帆にお金を貯めて一軒家を購入する予定だったのだが、突然やってきた大不況。貯めていたお金も底を付き、二人で心中を計ったのだが悲しいことに女性のみ亡くなってしまった。
男性は死ねなかったことに呆然としていたのだが、次に女性の亡骸をどうするかと悩んだ。警察に行く訳にも行かず、悩んだ末に男性は女性の亡骸を壁の中に隠してしまったのだ。壁を壊し、涙ながら女性の亡骸を入れ、指輪も入れ、なけなしの金でど素人ながらも壁を修繕して、男性は部屋を出て行った。
「そういえばお爺ちゃん、以前にカップルが失踪して困ったことがあったって言っていたような……」
「たぶん、そのカップルやと思います。仏様を早う出してやってください。あと、指輪も一緒に埋葬を」
南無……とお経を唱え始める地蔵。その後頭部をペロペロと舐め始めるタローがいたそうだが心頭滅却すればの言葉にあやかり、地蔵はお経を唱え続けたのだった。
後日、そのマンションからは白骨化した遺体が見つかったとニュースになった。その白骨化した遺体の左手の薬指と中指には婚約指輪のようなものが嵌められていたらしい。
その後からは特に部屋から物音も気配もなくなったそうな。
「ということやから沢子はん、おまんじゅうください」
「はい、依頼解決お疲れ様です。お約束の報酬のYマートの割引券です」
「いや沢子はん、自分どっちかっていうとおまんじゅうを」
「どうぞ」
「沢子はん話聞いてほしいですわ」
【空き部屋の気配 怪異ランクD 解決】
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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2021年7月21日 17時