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周りからは盛大なため息が聞こえた。とても沢山の。明らかに一人分ではないため息が。
「違うでしょ?」
「まずはこんな夜中に捜索に来た俺たちに感謝と労いの言葉をかけるべきだろ?」
伊作さんが諭すように言い、食満さんがからかうように言った。
「えっ? えっと、ありがとうございます……お疲れ様です……?」
「心配をかけたことに対する謝罪も欲しいな」
長髪をそよ風に揺らしながら立花さんが笑った。
「それに関しては本当にすみません……」
沈んでいると誰かが私の手を握った。
「帰りましょう、先輩方にいじめられて可哀想なAさん」
「ちょっと伏木蔵! 僕たち別にAちゃんのこといじめた訳じゃないよ!」
弁解する伊作さんに構わず伏木蔵くんは私の手を握ったまま歩き出した。後ろからの声が聞こえていないはずが無いので完全に無視していることになる。
「伏木蔵くんも、ありがとね」
「気にしないでください。でも僕、安心したら眠くなってきちゃいました」
ふわあと大きな欠伸をする伏木蔵くんに申し訳なさが募り、おんぶをするから寝ててもいいと提案した。
「本当ですか? ならお言葉に甘えて。……えへへ、おんぶされるのは二度目ですね」
「そうだね」
伏木蔵くんの柔らかい頬が私の頬に触れた。
「立派な忍者になったら今度は僕がAさんをおんぶしてあげますね」
「それって少なくとも数年先なんじゃ……。恥ずかしいから遠慮しておこうかな」
「もう心に決めた事なので、待っててくださいね」
はいはいと雑に返事をして寝なくていいのかと振り向くと、頬に先程とは違う何かが触れた。一瞬呆然としてしまったが、確信犯的に微笑む伏木蔵くんにぶわりと体の熱が高まった。
「いきなり手を離されるなんてすごいスリル」
思わず伏木蔵くんを支える手を離してしまったが、それを予想していたかのように彼は華麗に着地を決めた。
「な、な……!」
口をパクパクと動かして必死に何かを喋ろうとするが言葉が出てこない。後ろから来た乱太郎くんに何かあったのかと聞かたが言えるはずもなく何もないと答えた。
___________
学園に着き、皆がゾロゾロと大きい門をくぐっていく。山本さんも学園内に入って、全員がこちらを見ている。
「おかえりなさい」
差し出された手を取って、私も門をくぐった。
「ただいま!」
fin
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時