記憶223 ページ34
誰かに優しいと言われたことがある気がする。
なんでそういう話になったのか、どうしてその人は私にそんな事を言ったのか。
あと少しで思い出せそうなのに、それの周りにある白い靄のようなものが邪魔をしていて真相が見えない。
「無理に思い出さなくていいよ」
伊作さんは私に優しい言葉をかけてくれたが、その表情は曇っている。
曇りの原因が自分となると申し訳ない気持ちになる。
「やっぱりAちゃんはAちゃんだね」
「……?」
「僕に対して、申し訳ないなあって思ってるでしょ? やっぱりAちゃんはとっても優しい」
(あ……)
私は確かにその言葉を言われた。他の誰でもない、目の前の彼に、伊作さんに。
一気に蘇ってきた記憶で私の脳はキャパオーバーを起こしそうになっていた。あれもこれも、全部大切だったはずなのに。手紙でも忘れないと豪語したのに。
「なんで忘れてたんだろう……」
気付けば、涙を流していた。
「思い出したの……?」
コクリと頷く。
記憶はとどまることを知らない涙と共に吐き出され、伊作さんはそれに小さく相槌を打ってくれた。
信じられないけれど、全部本当にあった事。
辛いことも沢山あった。
伏木蔵くんたち可愛かった。
おばちゃんの料理美味しかった。
仲良くしてもらえて嬉しかった。
離れるのは寂しかった。
「……伊作さんのことが、好きだった」
「うん。……って、え?」
今までは静かに相槌を打っていただけなのに、最後に打ち明けた言葉にだけは彼は過剰に反応した。
告白に対する恥ずかしさなどない。それを上回る経験をいくつもしてきたのだから。
「え……え? いつから? だって、僕の告白は断って、でもその日にいなくなっちゃって。……記憶も今思い出したんだよね?」
「断るしかないじゃないですか。両想いとか関係なく。私はあの世界の人間じゃなかったんですし」
淡々とあの時の事を伝えると彼はへなへなと空気が抜けた浮き輪のようにその場にへたり込んだ。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時