記憶207 ページ18
いい事をした気になっていたけれど、去り際に見えた利吉さんの顔はどこか困っていたような。
(でも小松田さんには感謝されたし)
いいか。
あまり深く考えず役目を終えたほうきを掃除用具入れへと片付ける。
「危ないっ!」
大声が響いて、何事かと振り返ると目の前には深緑の布。僅かに汗の匂いがした。
「ふう、間一髪。なんとか間に合ったな」
真上からした声は。
「食満さん?」
体の向きを掃除用具入れに戻すとしまったはずのほうきがバランスを崩したのか倒れてきていた。食満さんがそれを私にぶつかるすんでのところで支えてくれていたのだ。
(おかしいな、聞こえた声は……)
食満さんのものではなかったと思ったのだが。とりあえず助けてくれたのが食満さんなのは事実なのでお礼をする。
「助かりました。ありがとうございます」
ほうきを持つと食満さんは手を離して私から離れた。倒れてこないのを確認してから扉を閉めて顔を真っ赤にしている食満さんにおかえりなさいと声をかけた。
(思春期……)
こういうのはからかうと無駄に気まずくなるので特にその事には触れないようにする。
「おひとりですか?」
食満さんと同じ組に所属する伊作さんが見えないのを不思議に思いそう問いかけると何も無い地面を彼は指さした。
文字通り何も無い。そう、土すらも。
(なるほど)
全てを悟った私はその"穴"へと歩く。
「留三郎ー、Aちゃん無事ー? 無事ならそろそろ引き上げて欲しいんだけど……」
穴の中から聞こえるその声はトンネルで喋った時のように反響していた。
「おかげさまで無事です。伊作さんは大丈夫ですか?」
穴から覗き込むと伊作さんは眉を八の字にして笑い、引き上げて欲しいと言った。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時