記憶206 ページ17
コツンと、足に何かが当たった。
足元を見るとそこには白の六角形と黒の五角形で構成された球体があった。
「サッカーボール?」
ここに来てまだ驚き要素があるとは。サッカーボールがあるという事は、サッカーをしていたということになる。
それを持ち上げて所有者を探そうとすると、後ろから乱太郎くんの声がした。
「拾ってくれたんですね、ありがとうございます」
どうやらサッカーをしていたのは乱太郎くんと遠くに見えるしんベヱくん、そしてもう一人誰か男の子の三人のようだ。ゴールのようなものは見当たらないがボールを蹴って遊んでいただけなのだろうか。
「もう授業は終わったの?」
拾ったボールを乱太郎くんに返して他愛もない話をする。乱太郎くんの後ろに二人の待っている姿。それだけでなく他の生徒たちもチラホラと各々遊んだり木陰で寝ていたりするのが見えた。
「怪我しないようにね」
乱太郎くんを見送って掃除を再開すると、今度は小松田さんを呼ぶ声がした。
「利吉さん!」
小松田さんがそちらに向かって走る。呼ばれた当人は右手を腰に当て立ち止まっていて歩く気すらなさそうにしている。
私の存在に気付くと利吉さんは軽く目を見開いた。私もちょうど彼に用があったので小松田さんに続いて歩き出す。
「その節は大変お世話になりました」
私が二人の元へ着く頃には入門票へのサインを終えていた利吉さんに深々とお辞儀をする。
「声出るようになったんだね。良かった」
何かお返しをしたいけれど私には何もない。せめて少しでもこの時代の硬貨を持っていれば良かったのだが。
その事を言うとそういう時はお互い様だと穏やかに笑ってくれた。
「そう言って頂けると助かります。改めて、ありがとうございました」
掃除に戻ろうと思うと、小松田さんが落ち着きなくソワソワとした様子なのが目に入った。
利吉さんはそれを見てはあ、と短足を漏らした。
「仕事の話なら後でするから、先に掃除をしてきなよ。終わってないんだろ?」
(ああ、それで)
小松田さんは利吉さんから話を聞きたいのだと分かった私は小松田さんの持っているほうきを奪った。
「小松田さんが手伝ってくれたおかげでもう終わりますし、後は私がやっておきます」
私は笑った。
「こういう時はお互い様なので」
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時