記憶202 ページ13
「何か勘違いしているようだが」
怒りをあらわにした表情を一変させいつもの凛々しい顔を見せる立花さんだが、その声は普段よりも幾分か低かった。
言ったように、勘違いしてるのは立花さんの方なのだ。
それなのに何故彼は私に対してその言葉を投げかけたのだろう。
「Aにあるのは私の気持ちを聞いて、それに対して返事をする権利だけだ。私の気持ちを間違いだ偽物だと否定する権利はAには無い」
なにを暢気に語っているのか。
怒りのような焦りのような感情が湧いてくる。
「でも、もし私の推測が間違っていなければまた過去のようなことが起こるかもしれないんですよ?」
平穏を壊してまで愛されたいとは思わない。
「往生際が悪いな」
はぁ、と立花さんは短く息をついた。
「学園を壊したくないという気持ちから恐れるのは分かるが、私はAの上辺だけを妄信的に好いている訳ではない」
柔らかく「これは今までの天女とは違う点だ」と立花さんは言った。
「なんならどんな点に惹かれたのか言ってやってもいいが?」
いたずらっ子のようににんまりと笑って見せた。
大人びた彼が年相応の表情を見せるのは珍しい。
考えていると「まず一つ目」なんてわざわざナンバリングして本当に言い出そうとするものだから慌てて止める。
彼なりに和ませようとしてくれたのだろうか。
優しさに心が暖かくなった。
そんな彼に、私も本当のことを打ち明けて、それでも良いと言ってくれるなら聞くことにしようと遅すぎる決心をした。
「さっきのは……半分建前で、本当の理由がもう一つあるんです」
私の力が他者を魅了するものに変わっているかもしれないのは懸念すべき点ではある。
立花さんは呆れることなく聞いてくれようとしている。
「私は不安定な存在です。どうして、どうやってここに来たのか分からないし、いつここから消えてもおかしくない。そんな私が皆さんの心に残ったら皆を悲しませることになるかもしれない。……だからできる限り、思い出を作りたくないんです」
私が消えても、最初からそんなモノ無かったと思えるくらいの存在でいることが皆を不幸にしない私にできる最善策だと思った。
納得してくれたのか、立花さんは何も言わない。
諦めてくれたのだろうか。
しかし私の心とは裏腹に、立花さんは平然と言い放った。
「なんだ、そんな事か」
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時