空っぽを埋めるモノ５【RKRN】

記憶201 ページ12

｢……それは｣



私は今から酷いことを言う。




立花さんが自分のプライドを投げ捨ててまで言おうとしてくれた気持ちに対して、言われる前に否定する言葉をかける。



でも、これしかない。

これしかないし、彼が惹かれる理由だってこれしか考えられない。
そうであってほしくないのに、そうであってほしい。


――ごめんなさい。



｢それは、立花さんの本当の気持ちではないです｣


立花さんの眉がぴくりと動いた。



｢何を言っているんだ、お前は私自身ではないだろう。何故私の気持ちが偽物だと言いきれる｣



立花さんは顔を歪ませた。
怒りともとれるようなその表情に臆することなく私は続ける。




｢他でもない私だからです。お忘れですか？ 私で五人目、なんですよね？｣



自覚症状があるかと言われると微妙なところだが、確実に違うとは言いきれない。
今まで妖術にかかった人たちをこの目で見たわけではないが、この短期間で、しかも最初は嫌っていた相手に恋心を抱いたとなればまず疑わなければならないところだ。
それでなくとも、疑っていた。


去らなければいけない理由ができてしまったと悲しくなるのは、本来駄目なはずなのに。



｢私の力が今までの人と違ったのは気を失う前までのこと。体が元に戻った今、別の力が目覚めていたとしてもおかしくはありません｣



立花さんは怒りを押し殺すように下唇を噛み締めた。



｢私の気持ちは、お前の妖術によるものだと言いたいのか……？｣




苛立っているのが分かる。


それはそうだろう。
返事をするでもなく、彼の気持ちを偽物だと否定したのだから。



しかし、立花さんには悪いが、それが一番濃厚な線なのだから仕方ない。
私だってこの学園を壊したくないからこんなことを言っているのだ。
それを正当化しようとは思わないし、誰かに分かってもらおうとも思わない。



……怒るほどの気持ちの強さなのか。



謝りたいが、今謝ってしまえば全てが台無しになってしまうので何も言うことができない。
自分の不器用さには呆れる他なかった。

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