空っぽを埋めるモノ５【RKRN】

記憶191 ページ2

体はもういいのか。
ピンピンしてます。


声出るようになったんだな。
ほかも元通りですよ。


この後は何をするんだ。
山本さんに会いに。




｢伊作には会ったか？ かなり心配していたぞ｣



まさか聞かれるとは思わなかったので、ついドキリとしてしまった。



｢……立花さんも心配しました？｣



今までの問答はしっかり答えていたのに、これだけは避けるように話を逸らしてしまった。
あからさますぎただろうか。



｢何か、あったのか？｣



私はどうしてこうも誤魔化すのが下手なのか。
真っ直ぐにこちらを見つめる立花さんは神妙な面持ちでそう問うた。
どうやら私の質問に答える気はないらしい。



｢何もないですよ。ただかなり憔悴していたようだったので、私の方が心配したというか｣



力強く見つめられて思わず目を逸らす。



一歩。
たしかにこちらに近付く足音がしたので、私は逃げるように一歩後ろに下がった。



｢伊作に何か言われたのではないか？ 例えば、お前のことが｣

｢いいえ｣




立花さんの言葉を遮る。



作業が止まってしまったので、再開を促すために生首フィギュアを一つ持ち上げた。



｢お昼に会っただけなので、たいした会話はしてないです｣



立花さんにそれを手渡すと、諦めたように受け取って棚へと戻した。



授業終了を知らせる鐘が鳴る。




｢今ので最後ですね。任せてすみませんでした｣

｢……いや。私こそ、話し相手になってくれてありがとう｣



私はそそくさと走って山本さんの元へ向かった。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿


一人気味の悪い被り物の並ぶ部屋に取り残された立花仙蔵は考える。


あれは、勘違いなどではない。


善法寺伊作の名前を出した途端、高坂Aは分かりやすく狼狽した。



伝えたのか、それともただ気付いただけか。


何もなかったという高坂自身の発言は考慮しない。
あの態度で何もなかったなどと、そんな言い訳は立花からすれば無理のあるものだった。



立花も倉庫を後にして、普段よりも早足で乱暴に歩く姿は苛立っているようだ。



伝えるつもりなどないと思っていた。



切れ長の目をさらに鋭くして遠くを見つめる。





どういう理屈でこの学園に落ちてくるのかわからない少女たち。
彼女はその五人目。
そして、ここよりも未来からきた――本来であれば、ここにいてはいけない者。
そんな者に特別な感情を持つのもまた、いけないことなのに。



立花は、何かを決心したようだった。

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