Escape World 2

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fk「そんな、…」

「衝撃やろ？俺も衝撃やったわ。それを康二は死んだ目で話すねん。名前はって聞いたら、無いです言うからとりあえず家に連れて帰ってみたら、今度は黙り」



はあ、と思い出したのかため息を吐いた室さん。



「とりあえず名前無いって言ってたしなーと思って。ほんで康二って名前付けたんやけどどつやら戸籍も無いらしいし。

生まれた場所すら分からんし、学校すら行ったことなかったみたいやっから、外連れ回して色々教えたんよ。それからや、話を聞けたのは。自分が何もかも壊した…とか、あとは君らの事やな。

友達にあべ君っておる？その子に謝りたいって」



謝りたい、か。


その言葉には、罪を償うために死にたいって意味も込められているのかもしれない。


早く会って、それは違って、ちゃんと言いたい。


話がしたい。



「でもな、康二が全部話しきった後に言ってん。もっと皆と笑いたかった、皆と話したかった、ほんまに楽しかったって…」



ああ、ほら。


わがままはさ、本人に言えよ。


俺らにちゃんと、言えよ。


いくらでも叶えてやる。


俺も翔太も佐久間も、堪えきれずに涙を流していた。


翔太は嗚咽すらもらしてる。



fk「Ｎｏ．1は……康二は、そんな…こと」



室さんを見ると、室さんも泣きそうになりながら俺達を見ている。


すると、突然頭を下げた。



「頼む！アイツに会ったって貰えませんか？ほんで、助けたって欲しいんです。

康二の口癖を死にたい、謝りたいから…笑いたい、生きたいに変えたって欲しいんです！俺に出来ることはもう無いんです。

俺は、居場所を作ることしかできひんかった…。だから、お願いします！」



居場所を作ることしか出来なかった？


違う、居場所を作ってあげることが出来たんだ。


戸籍は持たない、夢かと思うほど現実離れした話をする死にかけの青年を拾って、普通に生活できるくらいにまで回復させたんだ。


それって、一言じゃ済ませられないくらい凄いことだろ。


室さんが頭を下げる必要なんてない。


寧ろ、俺たちが下げるべきだ。



fk「室さん、ありがとうございます。もちろんです。康二に、会わせて下さい」

「…ありがとう、ありがとう……」



泣きながら俺の手を握る室さんは、さっきまで見ていた堂々とした社長の姿ではなく、1人の善意ある人間の姿だった。


ここからは、俺達の番だ。

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