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fk side
突如、皆が消えた。
さっき視界が歪んだのはここに来た時と同じだったけど、俺だけは変わらずここにいる。
向こうもそうみたいだ。
櫻井先生は俺を見て静かに微笑んでいる。
その瞳が寂しそうに見えるのは俺だけだろうか。
fk「何のつもりですか」
ぶっきらぼうに聞こえただろうが、お構い無し。
こっちは仲間を奪われ、挙句今は孤立させられてるんだから。
櫻井先生は綺麗な姿勢を崩すことなく俺に1歩近づいた。
俺と先生の距離は残り10歩ほどになる。
赤「……君は、研究所で何を見て何をされた？」
まさか質問に質問で返してくるとは。
さっきの問いに答える気は無い、という意なのか。
fk「俺は、研究所で大切な仲間に出会いました。苦もなく楽もなく、いつも通り能力のテストを受けて、暮らしていた」
そう、ある日までは。
そう言うと、櫻井先生の口元がピクリと歪む。
fk「その日を境に俺達は地獄を見るようになりました。…能力のテストは俺達の精神も身体も蝕むものになり、優しかったはずの研究員達は俺達をただの道具としか見なさなくなった。
俺たちはその地獄から抜け出すために研究所からの逃走を測りました」
それは失敗する可能性を踏まえて、覚悟を決めて行われた。
だからあの頃は微塵も考えてなかったんだ。
全てが壊れて無くなってしまうなんて。
赤「俺思うんだ。この世に能力者さえ、忌み子さえいなければ…こんな事にはならなかったんじゃないか、って。
君たちだって、苦しまずに済んだだろ？…ねえ、能力者って何のためにいるの？」
能力者が何のためにいるのか。
そんなこと聞かれても、俺達だったなりたくてそんなものになったわけじゃない。
皆と出会えたことは嬉しい。
でも、俺達を出会わせてくれた能力はそれに加えて俺たちを壊した。
赤「俺はさ、ただ大切な友人達と楽しく過ごして、生徒達に色んなことを教えて。そうして生きていければそれで良かったんだ。でもそんな時、彼は博士になった」
…彼は博士になった？
博士が現れた、じゃなくて？
赤「彼はなんでもないただの人間のはずなんだ。なのに、能力者がいたから…彼は博士になってしまった」
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作者名：花
| 作成日時：2020年6月1日 16時
