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注射器から何かの液体が阿部ちゃんに注ぎ込まれ、数秒後、今度は阿部ちゃんの血液が注射器に注ぎ込まれた。
惨い。
その言葉を口に出す前にそれは、康二の首元へと突き刺された。
あまりにも一瞬の出来事で、立ち竦み見つめることしか出来なかった俺達は我に返ったように2人の名前を叫ぶ。
途端、膝から崩れ落ちる阿部ちゃんと、全身を痙攣させる康二。
俺の耳に入ってくるのは康二の呻き声と博士の高笑いだけになった。
突如部屋が揺れ、足元がおぼつかなくなる。
俺がやっとの事で2人の元に歩き出せた頃には、部屋…というより、空間に亀裂が走り始めていた。
iw「なんだ、これ…」
ru「崩壊…」
黄「翔ちゃん！！」
ニノの声が聞こえた。
そうだ、俺達には無効化があるじゃないか。
だけどそんな俺達の期待を裏切るように櫻井先生は叫んだ。
赤「無効化はしてる！…んでだよ、なんで無効化されないんだよ！」
無効化…されない？
能力を無効化させる能力が効かないなんて、そんな理屈ありかよ。
まずい、打つ手無しじゃん。
黄「俺の空間が…壊される…、、」
緑「だめ！コピーも出来ない！」
これが、能力者の完全体。
能力を受け付けず、能力を意のままに操る。
真っ直ぐ走れないくらい歪んだ空間に俺の足も止まる。
立っているだけでも必死なはずなのに、俺の横を何かが通り過ぎた。
目で追うと分かる、目黒だ。
mm「だから…頼れって何回言わせりゃ分かんだよ！！」
目黒はその言葉と共に、康二を抱きしめた。
今の俺にはどうすることも出来ない。
頼む、目黒。
助けてやってくれ…康二のこと。
＿＿＿＿＿＿＿＿
kj「ぇ、…！」
震えたまま声と呼べない声を吐き続けていた康二が反応した。
すると、部屋の崩壊は止まり、その様子を見た博士が笑うのをやめる。
「康二…何してる」
kj「……」
「何してるって言ってるんだ！！！」
康二が顔を上げると先程まで曇っていたはずの橙色の瞳は消え、右目は真っ黒、左目は透き通るように輝く夕陽のような橙色の瞳に変わっていた。
オッドアイに魅入られていると、康二は眉間に皺を寄せながら博士へと怒鳴り散らす。
kj「もう…もうお前の言うことなんか聞かへん！俺は、お前の息子の康二じゃない！向井康二や！！」
「お前、育ててやった恩を忘れたのか！！」
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作者名：花
| 作成日時：2020年6月1日 16時
