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side 潤
Aさんとお付き合いするようになって(正式な報告はないからなんとなく雰囲気でそう感じてる)、社長は一層穏やかになった。
でもそれはほんの数日で。
最近は険しい表情と、深いため息ばかりついてる。
帰れない日も無理矢理帰りたがっていたのに、それをしなくなった。ただ、二人の付き合いが落ち着いてきて、離れてる時間も必要だと感じるようになったからかなと思ってた。
でも・・そうではないと、今日確信した。
「社長、まだ連絡がつかないんですか？」
停車するように命じられてから五分は過ぎてるのに、社長は車から降りようとせずにスマホを握りしめたままだ。
「ご自宅へ車をまわしましょうか？」
この問いかけにも、反応がないまま。
「・・社長、」
「潤くん。」
社長の声が強ばる。嫌な予感しか、しない。
「俺は付き合ってると思ってたんだけど、勘違いだったのかな？」
社長が、ミラー越しに視線を送った先。
コンビニのカフェスペースに、Aさんと知らない男が楽しそうにコーヒーを飲んでる。
「ただのお友達じゃないですか？」
「今日が初めてじゃない。前に駅前で話してるのを見たし、アパートまで送ってるとこも見た。」
「それだけじゃ、」
「ただの友達なら、彼氏に話すもんじゃねぇの？フツー。」
シートに何かが落ちる音。きっとスマホだろう。シートに体を預けて、大きなため息をついた社長は、ゆっくり目を閉じた。
「やましいことではないからこそ、言わないのではないでしょうか。」
『潤くんドラマの観すぎ』って笑い飛ばすと思ってたのに、社長は何も言わないまま。
「俺はそんなにできた人間じゃねえって、Aが一番わかってくれてると思ってたけど・・」
カチッと金属が合わさる音。同時に流れてきた煙草の煙。珍しいと不自然が重なる。嫌な予感がムクムクと膨らむ。
「そうじゃなかったんだな。」
少し開けた窓ガラスに雨が打ち付ける。流れていく様が儚くて、社長の横顔と重なってみえた。
「俺さ、いつから嫉妬に狂う、小さい人間になっちゃったのかな。」
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作者名：蒼しょこら
| 作成日時：2019年6月5日 13時
