蓼食ウ虫モ好キ好キ*KN*3 (ページ21)

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「さて」とソファーにかけてあった上着を羽織って、またにこりと微笑んだ社長は。
「よし行こう」と私を手招きする。

頷かされ、秘書をやるはめになってからまだほんの数秒。社長は私のバッグを抱えて部屋を出ていく。慌てて追いかけると

「Aちゃんと出てくるねー。あとよろしく♡」

「いってらっしゃいませ、社長。」

「あとよろしくねー。」

小柄な、可愛らしい男の子。
社長を見る目が、他の社員さんたちと違う気がしたけど・・

「アイツね、俺に心酔してるから(笑)」

「あ・・へぇー。」

「ちょっと！変な勘違いしてない？」

「あっ！えっ？・・へ？」

「やっぱり！俺そういうシュミ、ないから！勘違いしないでね？」

そう言われると・・尚更怪しいけど。

「はい。わかりました。」

「ん。よろしい♡」

さりげなく私の頭に触れた社長の手から、嗅ぎ覚えのある香り。
思わず下を向いたのがばれなきゃいいなと、「バッグは自分で持ちます」と社長の手から強引に奪い取った。

「あ、ごめん。女子は大切なモンがいっぱい入ってるもんね？」

「あ・・いえ、失礼しました。自分のことは自分でしますから！」

「そ？Aちゃんに甘えられたら、男なんてイチコロだろうに。」

綺麗な口笛を奏でながら、さらっととんでもないことを言った社長は。
真っ黒なスケジュール帳を捲ってる。

「今日の予定ね？明日からは俺が予定を送るから、Aちゃんが管理してくれると助かるなー。」

「は、はい。後でコピーさせていただいて、」

「いんや、スマホに送る。」

「はい？」

「だから番号、後で教えてね？」

こういうの、ナンパっていうんじゃ？
ここまで手慣れてると、普通はひいてしまうのに・・なぜかドキッとする。

社長はきっと、そういうことに長けてる人なんだ。でも、仕事にまで発揮しないでほしい。ましてや、秘書を相手に。

「はい。わかりました。」

「ん。よしよし♡」

また私の頭を撫でてる手。
またさっきと同じ香り。

あ、アイツのタバコのにおいと同じ。また視線を逸らしてしまったこと、バレてないといいけど。