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side 潤
押さえつけてた社長の体から力が抜けていく。ゆっくりとその場に座り込んだ社長は、エネルギーを使い果たしたのか元々丸い背中が、さらに丸くなって見える。
それでも。
櫻井さんを見上げてる瞳は変わらず光が灯ってる。
「これを彼女に渡したときは本気だったよ？そちらの秘書さんにもジャブ打っといたのに。びくともしなかったんだなぁー。」
分厚い封筒をパタパタと動かしながら、唇を強く拭って「主が主なら、仕えるのもそれなりか」フフっと笑う。相変わらず、櫻井さん一人で楽しそうだ。
「俺に彼女って紹介しといて？もう彼女は関係ないって？そんなのニノらしくないなって思ってた矢先。偶然、彼女の会社の前でニノが揉めてるの目撃してさ？」
あの、Aさんの後輩の彼とのことか？
あの現場が、目撃されてた？
「やっぱり、まだ彼女と繋がってんなって。ミオちゃんに話を聞いて確信したわけ。」
「・・は？何それ？」
「あれ？彼女に聞いてない？俺らと行った水族館で、ニノと一緒にいたときに彼女を見かけて・・声をかけようとしたら背を向けられたって。」
もしかして・・
勘のいいAさんなら、勘違いしそうな状況。その時感じた嫌な予感が、狂っていった歯車と重なっていく。
「彼女はニノのこと、本気だったんだよ。」
気づいたら、社長は膝を抱えてる。
そんな社長を櫻井さんは心配そうに見つめてる。
「社長である以上、彼女とのあやふやな関係はリスクが高すぎると思ってた。余計なお世話だってわかってたけど、彼女が本気になる前に離れてもらおうと思った。でも結果、彼女も、ニノも傷つけた。」
ゆっくり、櫻井さんも座り込むと。
胡座をかいたまま、頭を下げた。
「ごめん、皆を傷つけて。」
しん・・と静まり返る空間。
櫻井さんの、衣服の擦れる音だけが聞こえる。
「まだ間に合うかな？俺にできることはなんでもするから。」
櫻井さんが社長の両肩に手を置くと、社長がゆっくり顔を上げた。
再び重なった二人の視線。
「言ったね？翔ちゃん。覚悟してといてよ？」
いつもの、二人の空気に変わった。
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作者名：蒼しょこら
| 作成日時：2019年6月5日 13時
