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side 潤
「おはよー。」
「お、おはようございます。今日は随分早いですね。」
「家に帰らないで来たからね。あー、今さら眠ぃー。」
昨夜はAさんのアパートの近くまでお送りした。コンビニで男性と親しげに話すAさんを目撃して、だいぶ落ち込んでたようだったけど・・大丈夫だったんだろうか。
「午前中は特に予定はありませんので、仮眠をとられてはどうですか？」
いつもと変わらないようにみえる。
でも、社長は“いつもと変わらないように”みせるのが上手い。
「・・社長？」
背もたれに体重を預けて、天井を見上げてる。薄茶色の瞳が、微かに潤んでみえたのは、見間違いか？
「ううん、大丈夫。起きれる自信、ないわ(笑)」
いや、見間違いじゃない。
こんなに悲しそうな顔は、みたことない。
「失礼ながら、社長。昨夜Aさんとお話に、」
「潤くん。」
「・・すいません、出過ぎた真似を。」
「もう、その名前を聞くことはないと思うから。」
社長にしたら、にっこり微笑んでるのかもしれないけど。
俺には心からの、愛想笑いですらもない。
抜け殻の社長の、心のない微笑み。
続けようと思っていた言葉を忘れてしまった。
「松本、今日の予定は？」
「・・え？あの・・」
「予想外の反応(笑)」
「は？・・あの、社長？」
くくって小さな笑い声。腕で顔を隠しながら、胸ポケットからスマホを取り出すと。
電源を切ってデスクにしまった。鮮やかな黄色のスマホケース。恐らくプライベート用。
「たまには社長らしく言ってみたかっただけ(笑)」
「すげぇ違和感」って笑いながら、立ち上がると椅子にかけてあった上着を羽織る。力なく微笑んで、無理矢理上げた口角。ため息混じりに吐き出した言葉は、重くて受け止められなかった。
「じゃないと、やってらんねぇんだわ(笑)」
もう、彼女が隣にいる未来は途絶えてしまった？
繋ぎ止めたと思ってたのに。
彼女の影がまだこんなに色濃く残ってるのに、忘れなきゃいけないのか・・
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作者名：蒼しょこら
| 作成日時：2019年6月5日 13時
