愛のかたまり105 ページ8
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声のした方へ二人同時に振り向く。
あ「しょ…ちゃん…?」
マスクとキャップを被っててもすぐにその姿が
紫耀ちゃんだと分かった。
何故彼がここに…?
タツヤ「平野くん久しぶり。」
固まって言葉が出てこない私を他所に
タツヤは平然とした態度で挨拶を交わす。
紫「栗原監督…?お久しぶりです。…え?」
流れで言葉を返す彼だけど、
私とタツヤを交互に見て少し混乱していて。
チラッと私の腰に置かれてる腕を見て
ピクッと眉を動かしてたのを
私は見逃さなかった。
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…これはなんだかまずい。
あ「ちっ、違うのっ!これは…」
さっきまでの酔いが一気に冷め、
タツヤから急いで離れて弁解しようとする。
タツヤ「ごめんね。平野くん。
Aが酔っ払って一人で帰らすのは
危ないと思って送っただけなんだ。」
私の言葉を遮るように代わりに
タツヤが弁解してくれた。
あ「そっ、そうなの!
タツヤもありがとう!ごめんねっ」
なんで私はこんなに焦ってるんだろう。
後ろめたいことなんて何もないはずなのに
勝手に後ろめたい気持ちになって
たどたどしくなって
早くこの場を切り抜けたいと思ってる。
紫「…そうなんですか」
不機嫌な重々しい紫耀ちゃんの声。
彼の背後がなんだかドス黒く感じるのは
きっと気のせいではない。
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この場にずっといるのは色々とまずい。
重く苦しい沈黙を破り、
あ「わっ、わざわざ送ってくれてありがとう!
そ、そろそろ部屋に帰ろうかな?」
ただ顔に貼り付けただけの愛想笑いを浮かべた。
タツヤ「あぁそうだね。
寝る前にしっかり水飲めよ。」
あ「う、うん。
気を付けて帰ってね。」
タツヤ「おやすみ、A」
最後にさりげなく私の頭に手を乗せてから
タツヤ「平野くんもおやすみ。」
ニコッと笑みを浮かべ、
彼にも言葉を交わしてタクシーに乗り込んだ。
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作者名:rion | 作成日時:2019年3月27日 16時