恋愛対象外【0125BD】

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ビールを二口くらい飲むと、グラスを置いて、

「今の家、会社に近いって言ってたけど、会社どこ？」

さっきまで不機嫌だったのがウソみたいに聞き慣れた低い声でそう聞かれて、仕方なく会社の場所を教えると、

「その辺だと、家賃そこそこするよなぁ」

って言って笑った。

「今のアパートは、古いからって、家賃は相場の半額以下だったから」

「いいとこ見つけたじゃん」

「まあ、就職してから今まで働いてきたし、引っ越し費用はいいんだけど・・・」

「・・・いいんだけど、何？」

「やっぱり、家賃が今より増えるってなると、きついかな・・・まぁ、日本の経済を引っ張っている櫻井社長には関係がないことだと思いますけど」

って敢えて距離を置いて、“社長”って呼んだら

「Aは、俺のこと、社長って呼ぶな」

って温度のない声で言った。



・・・やっぱり、あの頃と同じじゃないんだよ、私も・・・櫻井くんも。



「・・・ごめん」

「・・・悪い、俺も言い過ぎた」

そう言うと、櫻井くんがふうっと小さく息を吐いて、ビールを一口飲んだ。

「俺、腹減ってんだよ」

って言いながら、目の前にあった唐揚げをつまんで食べると、

「うま！」

って言って・・・口いっぱいに食べるのとか、「うま！」って言い方とかが、昔と全然変わってなくて、ほんの少しだけ、緊張が解けた。


「Aはさ、シェアハウスとか、興味ある？」

「シェアハウスかぁ」


最近、耳にすることもある”シェアハウス”

だけど、全然考えてなかった。


「わかんないけど・・・・・・どんな人と住むかにもよるかな」

少し考えて、そう答えた私に

「それでよければ、俺、物件紹介できるけど？」

って上目遣いにそう言った。





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