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なのに、同窓会で5年ぶりに会っても、櫻井くんはあの頃みたいに私に接している。
「こんな風に出来るの、こいつらと、Aの前くらいだわ」
なんて言って、本当に昔と変わらない扱いを受けてるけど、きっと、忙しくて、私のことなんて思い出すこともなかったんだろう。
櫻井くんにとって、私の存在なんて・・・そんなもの。
そんな現実が、痛いほど、分かった。
ビールに手を付けずに、俯いて座ったままの私に、目の前に座った松本くんが気が付いた。
「・・・A、大丈夫??」
俯いた私を覗き込むようにして、心配そうに見つめる大きな瞳。
私は顔を上げることはできないまま
「・・・ごめん、やっぱ、帰る」
そう言って、バッグから財布を出そうとすると、
「今日はいいから・・・ごめんね?」
って松本くんが優しい声で謝った。
そんな私と松本くんのやり取りを、私の隣で、冷たい瞳で見つめる櫻井くんが視界の端に入って、
「じゃ、あんまり、飲みすぎないでね!」
って精いっぱいの作り笑いをして、部屋を出た。
「え、もう帰っちゃうの?」
さっき、長瀬くんって呼ばれてた人が私に声を掛けたけど、
「・・・すみません、急用ができて」
って言って、早歩きで店を出た。
店を出てからは、ハイヒールで躓きそうになりながら、とにかく、ひたすら走った。
櫻井くんが追いかけてくるわけもないのに、一度、立ち止まって後ろを振り返って。
やっぱり、追いかけてきてはいなくて、分かっていたのに落ち込んだ。
やっぱり、同窓会なんて行くんじゃなかった。
やっぱり、櫻井くんに逢うんじゃなかった。
駅に駆け込んで、タイミング良くホームに着いた電車に乗り込んだ。
気が付けば、家の前に立ってたけど、どうやって帰ったかも、覚えていない。
とにかく、早く一人になりたくて、震える手でバッグから部屋の鍵を出したけど、鍵がなかなか開けられなくて。
ようやく、鍵を開けて、部屋に入ると、ずっと堪えてた涙が頬を伝った。
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JUMP©(プロフ) - はじめまして。今まで見た櫻井くんの小説の中で1番面白かったです!最高すぎです! (2018年3月20日 23時) (レス) id: 6d0fd0d2ee (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - もぉ「サイコー」の一言です>^_^<潤くんと斗真くんの素敵なアシストで…やっと一緒になれた二人(*^艸^*)仲間っていいな♪ (2017年10月29日 10時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
くま - 初めまして。最高でした!これからも読ませていただきます (2017年2月7日 18時) (レス) id: 580296d8bb (このIDを非表示/違反報告)
かな。(プロフ) - あたしも たまらんです(ToT) ココロあたたまるぅー(ToT) これから他のおはなしも読ませていただきますm(__)m (2017年1月31日 0時) (レス) id: a6a05aa3cf (このIDを非表示/違反報告)
ayan(プロフ) - 完結おめでとうございます(*´艸`*)たまらんです! (2017年1月29日 23時) (レス) id: e9b28d9f07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でいじぃ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年1月23日 19時