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暗いリビングの毛足の長いカーペットの上にテーブルをはさんで2人で向かい合う。立派なソファがあるのに平野さんは座らないから、私も座りにくくて正座していた。
「この前は悪かった…あれから廉くんと話せたか?」
紅茶をひと口飲むと、突然真面目なトーンでそう言われて拍子抜けしてしまう。暗闇の中でさらにサングラスまで掛けた平野さんの表情はよく分からないけれど、声には躊躇いのような響きが含まれていた。
「はい、優しかったですよ。平野さんのことも興味あるって言ってました。言われたこと気にしたのか、美白と筋トレ始めたって言ってはいましたけど…この前渡してくれた新作の話したら、廉くんも喜んでくれました」
「廉くん、良いヤツだな。イケメンだし」
「何ですか急に…この前は散々オタマジャクシとか言ってたのに。変ですよ、真面目な平野さんなんて」
「はぁ!?何でだよ、せっかくわざわざ来てくれたから真面目に話そうと思ったのに…ってか、何で家知ってんだよ!」
「神宮寺さんが教えてくれました」
「ったく、アイツ…俺のプライバシー何だと思ってんだよ…まぁ、結果的には餓死せずに済んだけど。…本当は、感謝してる。ジンにも、お前にも」
一言ひとこと、俯きながら紡ぎだすように発する平野さんはやっぱり慣れなくて、おかしな感じがした。まるで電波圏外のスマホで高画質の映画でも見ようとしているみたいだ。じれったいし、らしくない。
「そうやって無理に真面目に喋らないでください…気持ち悪いし、もったいないです」
「…もったいない?」
「はい。平野さんの小説読みました。新作と、デビュー作。すっごく感動しました」
「おう、…ありがと」
「平野さんの感情はきっとすごく繊細で複雑で、口に出して私なんかにだけ伝えるにはもったいないんです。だから、これからも心の中にあるものは全部小説にしてください。活字にしてもっと沢山の読者に伝えたほうが、ずっと素敵です」
「ごめん…」
何故かボーっと目線より下の方を見ていた平野さんがボソッと呟いた。
「どうしたんですか?」
「お前、Cかと思ってたけどよく見たらBしかねぇな。過大評価してて、ホントに申し訳ない」
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おまめ(プロフ) - 鈴さん» これからぶっ飛んでいる紫耀くんのバックグラウンドも分かっていく予定です!今後も癒やしになれるように頑張ります! (2020年4月27日 23時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 紫耀くんがぶっ飛んでいて、本当に面白いです!日々のいやしです!これからも更新を楽しみにしています! (2020年4月27日 20時) (レス) id: 128302e214 (このIDを非表示/違反報告)
おまめ(プロフ) - こころさん» 笑っていただけて、とても嬉しいです!これから頑張って少しずつ展開させていく予定です! (2020年4月27日 20時) (レス) id: b7debf5ad9 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 面白いです!!何度も笑ってしまいました!これからどうなるのか見当もつかないので楽しみです (2020年4月27日 1時) (レス) id: 83e4350742 (このIDを非表示/違反報告)
おまめ(プロフ) - 鈴さん» 楽しみにしていただけてとても嬉しいです!これからも更新頑張ります! (2020年4月26日 22時) (レス) id: b7debf5ad9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜木 | 作成日時:2020年4月22日 19時