45 from REN ページ45
「主人公は廉、ヒロインは美郷、主人公の友人役に…」
サークル活動の最後に、大倉さんが夏公演の配役を発表した。大倉さんはうちの演劇サークル出身で、今は舞台の脚本家・演出家として活躍する傍ら、サークルの専属コーチとしてもたまに来て演技指導や脚本・演出に携わってくれている。俺は何故か主演に抜擢されて、嬉しかったけれどそれ以上にプレッシャーが大きかった。先輩方を差し置いて、演劇に関して右も左も分からない状態の俺なんかが主役を演じられるんやろうかって。
「よろしくね、永瀬」
ヒロイン役の美郷さんは笑顔でそう言ってくれた。美郷さんは2つ上の先輩で、去年のオープンキャンパスでは主演を務めていた人だ。Aと一緒にその公演を見ていて、ふたりで感動してずっとその話で盛り上がった。それまでは特に演劇に興味があったわけやなかったけど、Aと共通の話題になったらええな、と思って入会した。高校まではサッカーやったけど、どうせなら大学では違うことやってみたかったし。
俺は大役をもらったプレッシャーに負けへんように頑張ろうって張り切っとった。
けれど、次の練習の日、部室に現れたのは美郷さんだけで。
サークルのグループラインには他の部員からの『私用で休みます』という欠席連絡がスパムメールみたいに大量に連続していた。こんなことは今までになかったから、何が起こってるのか最初は分からんくて。でも、そのうち理由に察しがついてしまった。みんな、俺みたいなのが主演することに納得いかんからや、って。
「みんな私用ありすぎかよ〜」
美郷さんはいつもどおりに軽い感じでそう言うと、
「始めよっか、練習」
と言って、台本も持たずにスラスラと台詞を声に出し始めた。俺も慌てて台詞を返して。美郷さんは他の人の分まで演技してくれて。それなのに、俺はやっと覚えた自分の台詞を言うだけで一杯いっぱいだった。こんなんやから、みんなに納得してもらえへんのやろうなって考えると、練習しながら泣きそうになって、それでもただ必死に台詞を言っていた。
「ずっとお前のことが好きだった」
最終シーンで主人公がヒロインへの愛を告白してから彼女に駆け寄って抱きしめるとき、最後の台詞を読み終わって気が抜けたせいか堪えていた涙が溢れてきて、抱きしめた美郷さんの肩に涙が零れていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おまめ(プロフ) - 鈴さん» これからぶっ飛んでいる紫耀くんのバックグラウンドも分かっていく予定です！今後も癒やしになれるように頑張ります！ (2020年4月27日 23時) (
レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 紫耀くんがぶっ飛んでいて、本当に面白いです！日々のいやしです！これからも更新を楽しみにしています！ (2020年4月27日 20時) (レス) id: 128302e214 (このIDを非表示/違反報告)
おまめ(プロフ) - こころさん» 笑っていただけて、とても嬉しいです！これから頑張って少しずつ展開させていく予定です！ (2020年4月27日 20時) (レス) id: b7debf5ad9 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 面白いです！！何度も笑ってしまいました！これからどうなるのか見当もつかないので楽しみです (2020年4月27日 1時) (レス) id: 83e4350742 (このIDを非表示/違反報告)
おまめ(プロフ) - 鈴さん» 楽しみにしていただけてとても嬉しいです！これからも更新頑張ります！ (2020年4月26日 22時) (レス) id: b7debf5ad9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜木 | 作成日時：2020年4月22日 19時
