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紫「やっべ、まじか」
暗い夜空を仰ぎ見ると
ポツリポツリと小さな雨粒が
私たちに向かって容赦なく降り注ぐ。
それは次第に激しさを増し
仕切りに止むことなく
地面を打ちつけていった。
紫「Aちゃん、こっち！」
急に左手に温かさを感じて
驚いていると
先輩は私の手首を握り
いきなり走り出す。
雨を掻き分けて
必死に先輩のスピードについていくと、
大きく息が上がっていく。
でも鼓動が大きく音を立てるのは、
決して全力疾走の
疲れからだけではなかった。
濡れて肌に張り付いた白いシャツ
走る度に香る甘い香水の匂い
大きな掌に包まれた左手首は
熱く熱を帯びる。
紫「はぁ、ついたっ……」
「はぁ、はぁ……っ…」
次に立ち止まったときには
息がこれでもかというぐらい
上がってしまっていて
膝に手を当て大きく呼吸を繰り返す。
紫「Aちゃん、ちょっとここで待っててね」
私を玄関にあげると
バタバタと大きな足音を立てて
遠ざかっていくその姿。
平野先輩の家だろうか。
一気に強く香った先輩の匂いを
全身に浴びて
心臓が酷く締め付けられる。
紫「ごめんね、このままじゃ風邪ひいちゃうよね」
真っ白なバスタオルが頭を覆い
視界が閉ざされると
平野先輩に髪の毛をワシャワシャと
乱雑に拭かれる。
その瞬間優しい柔軟剤の香りと
いつのもバニラの甘い香りが
混ざり合って鼻の奥を掠めた。
ただ下を向くことしかできなくて、
未だ整わない呼吸を
何度も何度も落ち着かせるように
吸って吐いてを繰り返す。
紫「お風呂溜めてきたから、Aちゃん入ってきていいよ」
「いや、でも…」
紫「風邪ひいちゃったら困るし。ね？」
.
なんとか先輩の言葉に宥められて
有難く浴槽に足を踏み入れる。
色んなことが一気に起こりすぎて
もう何が何だか分からなかった。
ただこの瞬間を失いたくないと
思っていたのは本心で
この空間に感じる些細なことに
先輩を重ね合わせていた。
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みう(プロフ) - こころさん» コメントありがとうございます^^今までの作品も読んでくださりとても嬉しいです、そして温かいお言葉の数々も嬉しい限りです(；；)これからも是非お付き合い頂けると幸いです。今作もご愛読ありがとうございました！ (2020年10月23日 23時) (
レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 完結おめでとうございます！みうさんの作品読んでます、いつも切ない感じで恋愛ってそんなに上手くはいかないもの、人の気持ちってそんなに簡単にいかないものって現実を見せられてる気がします。いつも素敵なお話ありがとうございます！また新作も楽しみにしてます！ (2020年10月23日 22時) (レス) id: f2c5e943bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みう
| 作成日時：2020年9月16日 17時
