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駅前に着いて、車を降りる。
窓越しに、彼が私の顔を見た。
翔「…それじゃあ、また。」
「うん。本当にありがとね。」
私の言葉に、にっこりと微笑んだ彼に
同じように微笑み返してから背を向ける。
数秒後、タクシーのドアがぱたんと閉まる音がして
寂しくなってつい後ろを振り返っても
彼はもうこっちを見ていなかった。
…だよね。
切なげに見つめ合うシチュエーションを、
少しでも期待した自分が馬鹿みたい。
自嘲してから一歩前に踏み出したら、
かばんの中で携帯が震えた。
胸騒ぎがして、急いで取り出す。
翔[今日はありがとう。]
あの日以来の、彼からの連絡だった。
うつむいた横顔が画面に照らされていたのは、
私にこれを打ってくれていたからだったの…？
返事をする前に落ち着きたくて、
携帯を鞄に戻そうとしたら
妙にタイミングよく次の通知が鳴った。
[もし、変に気を遣わせてたらごめん。]
[突然で驚かせたかなと思って。]
[今日も今までも、あんまり話せなかったから]
[どうしてるかなって、気になって。]
"気になって"
その一言に反応してしまう自分がすごく嫌。
"それ以上の感情はない"、ってことを
仄めかしてるだけじゃない。
抜かりないね。
もちろん、いい意味。
変に期待持たせるのも悪いからって
ものははっきりいう人だもんね。
それでも優しい言い回しに、
大切にしてくれてるのを感じてしまって。
それだけで喜んでる私が悪いよね。
[今日は話せて良かったよ。]
[じゃあね。気をつけて帰るように。]
メールを最後まで読んだ時には、
彼を乗せたタクシーはとっくに発車してしまっていた。
こんなに近くまで送ってくれたのに
帰り道の心配までしてくれるんだね。
誰もいない、夜の住宅街。
さっき見えた彼の横顔が、残像みたいに
暗い道路にぼんやりと浮かんだ。
ほんのりと灯りに照らされる、
彼の麗しい横顔を思い返すと
自然と呼び起こされた記憶。
三年前の、あの日の横顔。
最後に見た彼のその姿は、
伏し目がちでどこか物憂げな表情を浮かべていて。
…それ以来、まともに会っていないんだもの。
今日の彼を、その日の彼に重ねてしまった。
ずっと思い出さないようにしていたけれど
今日だけは特別に…浸ってみてもいいかなあ。
あの頃は、確か……
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らびりんす(プロフ) - 柚さん» はじめまして！ありがとうございます、嬉しいです(^^) (2017年5月9日 12時) (
レス) id: f1ca372844 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - はじめまして。このお話のファンです！これからも楽しみにしています(*^-^*) (2017年5月9日 3時) (レス) id: 4a5934561b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽 | 作成日時：2017年3月27日 8時
