【実況者】陸 待っているのは絶望か奇跡か

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「監督！どうしてキヨは牛沢先生を叔父だと誤解したんですか？仮に足音が似ていたとしても、顔を見れば違うって分かるはず。なのに、ど…」

「Aさん。今日は忙しいので失礼致します。また用があれば来てくださいね」

ピシャン。
p-p監督が、保健室を出ていった……。いや、露骨にキヨの話題を、避けた……？

「……ヒラくん、どういうこと？」

ヒラくんはうつむいていた顔を、私に向ける。…能面のような無表情だった。

「………誤解が解けなくなる病気、なんだよ。と、いうか疑り深くなっちゃう病気。キヨはそれなんだよ」

…びょ、病気？
信じられない。キヨが？あのキヨが？

「…な、なんていう病気さ？」

「………A。誰にも内緒と約束できるんだよ？」

…………。
うっしーの足音を叔父のものだと誤解したキヨは異常なほど錯乱した。
その誤解はうっしーが話し掛けても解けることはなかった。
それをヒラくんは病気のせいだという。誰にも内緒だともー…。
キヨが、その病気でどれだけ苦しんでいるのか。

「うん。ヒラくん、約束する。誰にも言わないよ。」

それからヒラくんは少し間を空け、話してくれた。

「…キヨは数年前から病気でずっと治療を受けているんだよ。」

……数年前。そんな前から？

「っで、でも。転校してきてから今までそんな風に見えなかったよ？」

「その病気は治らないけど、上手く治療すれば付き合っていける病気なんだよ。」

「そ、そうなんだ……」

「キヨは一日二回注射しないと、今日みたいになってしまうんだよ。今朝は叔父に意地悪されて注射できなかったみたいだよ……。」

つまり、たった一度注射を忘れただけでキヨはあんなに怯えてしまうの…？

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