17 ページ17
「残念だけれど、山狗は無理だ」
「…………え？」
再びこの部屋に戻ってきたアブが放ったのは、そんな言葉だった。
p-pが、どうしてですか！？と声を荒げる。アブは、眉を八の字にして困ったように話出した。
「最近、清村鉄平の愛人、里花が行方不明になったらしくて。警察が鉄平をマークしているのです。山狗は秘密部隊。警察にもバレたらいけない。……それにヒラくん、こういうのは正攻法で解決するのが筋だろう」
正攻法？そんなの幾多の世界で何回もやった。
「警察とか児童相談所とかさ。あ、学校へ相談してみたら？」
そんなの……そんなこと
「何度もやったけどムダだった！！」
俺は二人を睨み付けながら叫ぶ。二人は面をくらったように唖然と、泣き叫ぶ俺を見ている。
「俺はお前たちになんの見返りも求めずただただ実験体として協力してきてやった！お前たちは俺の母だって消したじゃないかッ！どうして同じことができないんだ！」
「ヒ、ヒラくん、落ち着いて…」
p-pがこっちに手をのばしてくる。それを力一杯たたきおとし、さらに叫んだ。
この世界なんて、もう、もう。
「俺はまたこの運命から逃れられなかった！」
何が努力だ。何が運命と戦うだ。
結局運命には勝てやしない！
「まぁたいつもの運命！あと何回死ねばいいんだよッ！アブは山奥で焼かれて死ねッ、p-pは睡眠薬で自ら死ねッ！
そして俺も死ぬ！こんな袋小路の世界に用はない！みんなみんな壊れて死ねばいいんだぁあああああうわぁあああああああああああぁぁあああッッッ！！！」
***
月明かり。一人ぼっちの夜。
診療所で喚き散らした後。
俺は台所で包丁を握っていた。
この世界でキヨは救えない。次の世界へ行こう。
次の世界では笑顔でキヨが待っている。
包丁を持ち上げ、自分の喉につきたてる。
さぁ…早く、キヨに会いに行こう
『今日から俺、こっちの家で暮らす。』
……じゃあこっちの世界のキヨは、取り残されてどうなるの？
カランカランと音をたてて包丁が床に落ちる。
キヨは………キヨは…。
「ヒラ」
見上げると、無表情のまま俺を見下ろす羽入がいた。
はじめからこうなると知っていたとも言いたげだ。
「この世の運命は気まぐれ。それに一喜一憂するなんて浅はかなことなのです」
「……セピアが来てくれて…運命に勝てると確信した世界で期待すんななんて…酷な話だよ」
「この幸運な世界は我慢強く待てばいつかきっとまた巡ってきますです。僕と一緒にその日まで待ちましょう、ヒラ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しの(プロフ) - 一番最初から全て読ませていただきました！ひぐらしのなく頃にの原作ファンなのですが、あの独特なすこしゾワリとするのに好奇心を駆り立てられるような感じが感じられてとても素敵です……！ (2017年6月14日 4時) (
レス) id: a87db4afc4 (このIDを非表示/違反報告)
いろはす - ひぐらしのなく頃には知りませんがいいお話です!更新、頑張ってください! (2016年11月23日 17時) (レス) id: e1dd9fb0f5 (このIDを非表示/違反報告)
たけのこご飯(プロフ) - ダイアナさん» コメントありがとうございます！了解致しました、暫しお待ちをー;; (2016年7月28日 11時) (レス) id: 6e1790e98f (このIDを非表示/違反報告)
ダイアナ - 皆様は「次まだかなぁ」って感じのワクワク感が大好きみたいですけどあたしは苦手かなぁ… 更新待ってます！ (2016年7月27日 23時) (レス) id: 3444009ee5 (このIDを非表示/違反報告)
たけのこご飯(プロフ) - かなでさん» そうなんです長いんですよ。原作はもっと長いんですよ((はい、是非最後までお付き合い下さい！コメントありがとうございました！ (2016年5月15日 19時) (レス) id: 6e1790e98f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たけのこご飯
作成日時：2016年4月17日 19時
