旧双黒限定短編集【文スト】【太宰治】【中原中也】

続き ページ11

「そっか……一応友達って感じなの？」
「嫌、ただの同僚だよ。書類整理をやらない私をいつも怒ってくれる」
「なにそれ、治は現実世界でも変わらないんだね……！！」
Aはクスクスと笑った。

「……ありがとう。結婚してくれて」
急に太宰から感謝の言葉をかけられ驚いてしまう。

「だって、私はずっと……君のことが好きだったから。彼方の世界ではまだ恋人にはなれていないが、今のこの世界は君と結婚できている。よく不安定になる私を見捨てず、そばにいてくれたね。ありがとう」
太宰は、織田との友人だった関係を思い出し。よく泣いていたのだ。Aを抱きしめながら。Aはそれでもただ側にいて、声をかけた。「大丈夫、貴方は一人じゃない。私がいるもの」と。
Aは太宰と結婚し、この世界のカラクリを知る唯一の存在として、寄り添った。太宰にとって、Aはかけがえのないものとなっていた。

「治、好きだよ」
「私も、愛してるよ。だから……

私と心中してください」

太宰は不安げな目で見つめる。

「はい……！！」


太宰は後で自 殺をし、Aを追いかけるらしい。太宰は身体の動かないAのために薬を飲ませようとする。

薬を飲む寸前、怖くて泣きそうになると、大丈夫と手を握ってくれる。

「死ぬまで側にいる。“僕”が看取ってあげる。大丈夫、“僕”もすぐに君のもとへ行く」

太宰が僕と言ったのは、嘘偽りのない仮面を被らない純粋な心の表れなのだろうか。それは誰にも分からない。






「……A」
亡骸を抱きしめる。

「“僕”も早く死にに行く。“私”は行くよ。あの二人に、この世界を頼みに行く」

ベッドに寝かせてあげて、太宰はそっとキスをする。

「愛してる」

太宰は部屋を出た

【完】BEAST

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