とある森の妄想族(短編集) 続 (ページ15)

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胃袋を掴め恋の...?(緑) ページ15

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『あーっ！また....また....』

運んできた食器を俺がいる洗い場に片付けにきた彼女。
わなわなと震える訳はきっと俺が調理場から貰ってきた刺身の切れ端のせいだろう。

「食べる？」

『食べる？じゃないですよ！食べるに決まってるでしょ！』

誘ってって言ってるのに。いっつも独り占めする。とぶつくさ文句を言う姿も可愛い。

俺が彼女を好きになったのはこうして餌付けをし初めてからだ。
あまり食欲がなくて賄いを残してしまったとき、食べて良いですか？と刺身を摘まむ姿が飼っている猫に似ていて。
そして残したこちらが後悔するほど美味しそうに食うからキュンとしてしまうのはしょうが無い。

『お疲れ様でしたー』

「あ、地下鉄やんな？一緒に行こや」

『お、神山さん今日電車なんですね』

「せやねん。自転車パンクして」

嘘。今日はラストまで一緒だから彼女に合わせて電車にした。
ごめんな俺の自転車、勝手にパンクした自転車にしてもうて。

『....え、7月1日誕生日なんですか？』

写真をとったシフト表を見ていたらしい彼女が、1日の上に書かれた"神ちゃんハピバ"の文字を見たようだ。

「あーうん。」

『なーんでもっと早く言わないんですか！次被るの10日ですよ！？』

「え、何、前もって言ったら祝ってくれたん？」

『当たり前じゃないですか。お世話になってますし』

「へぇ、うれし」

心から漏れた声が彼女にとって刺激的だったようで

『な、なんですかもう！すぐそうやって！』

「なにい、何顔赤くしてんねん」

『神山さんいつもそう。しれっとこっちが照れることする』

「えーそうかなあ。例えば？」

『あーん、とか、頭ぽんぽんとか...』

あーそれは故意的やなあ。今回のはちゃうけど。
よかった。それもちゃんと刺さってたんや。

.....ほな一か八か。

「今週の土曜日ヒマ？」
『え？.....ヒマですけど』
「ご飯食べいかへん？」
『え？』
「祝ってくれんねやろ？誕生日」
『あ、はい。えーっと誕生日会ですか？』
「そう、2人で」
『2人で！？』
「あ、俺んちでええか」
『家！？』
「なんか作ったるわ」
『手料理！？』
「え....嫌？」
『待って下さい、どういうこと！？それって、なんか、まるで...その...』
「うん、すきやで？」
『えーーー！？』

さて、ここからが本番やな。
彼女の胃袋をつかめる料理を作りますか。

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