とある森の妄想族(短編集) (ページ25)

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「阿呆か何言ってんねん」

『っえ、......小瀧』

「お前ほんま、歩くの速すぎ」

少し息の上がった小瀧は、あっつ、と髪を掻き上げつつも掴んだ私の腕を放す気はないらしい。
何でここに？幸はどうした？より戻すんじゃないの？
聞きたいことは山ほどあるのに全然声がでてこないのは小瀧の唇でそれを塞がれているからで。

苦しい、と顔をよじっても後頭部を押さえられて逃げられない。
手は塞がってるしどうしようもない。そう抵抗するのをやめるのを見計らってかゆっくりと離れる。

「阿呆」

『さっきからそればっか』

「やって阿呆やん」

『煩いな、なんで追いかけてきたの』

「当たり前やろ、彼女やんか。
........なんやその顔」

『私、でいいの。幸じゃなくて』

「はぁ、ほんま阿呆や。ええか？そんな両手に食い物抱えて、阿呆みたいに食うし呑むし、素直やなくてかわいげもないけど、

俺にとってはお前が一番愛おしくみえんねんで」

『い、いとお、しいって....』

小瀧の言葉に恥ずかしくなって顔を伏せる。
パンプスの先は薄汚れて汚い。帰ったら洗わなきゃ。

「余計な心配せんと、黙って酒飲んで食ってればええねん。」

『は！何その言い方！』

頭上から不意打ちに降ってきた言葉にイラッとしてバッと顔を上げると目の前に小瀧の顔があって。

「おい、逸らすな」

『煩い、別に逸らしてない』

「ふふ、可愛いやつやな」

あんなに可愛い元カノの足下にも及ばないけど、あと少し、一日でも長く小瀧と一緒に居たいと思う。

(よし、もう一回お祭りいこ)

(は？まだ食うん？)

(当たり前、はいUターンしよ)

(あーもうほんま)

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