とある森の妄想族(短編集) (ページ24)

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可愛くないが可愛い(桃）ページ24

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『やばい、めっちゃ美味い』

「お前ほんま食いすぎやって。気持ち悪くなっても知らんで？」

夏の20時過ぎは風が涼しく吹いていてとても好きだ。
そしてこのお祭りの雰囲気。最高。

小瀧は会社の同期で、数ヶ月前から付き合い始めた。
何で私なのか、本当に恋愛感情なのか知らないけど、私はコイツと居ると楽だし、飾らなくていいし好きだ。

大食いの大酒飲みの揃う同期の中でも軍を抜いて私がトップ。
今だって、小瀧に持たせた焼きぞば、フランクフルトも、私が持っているイカ焼き、ビールもぜーんぶ私のものだ。

気分は最高。
もう一生祭りなら良いのに、そう思うくらい。

一度座るところを探そうという小瀧に続いて人混みの中を歩いていくと急に脚が止まるからぶつかりそうになる。
あぶね～、ビールぶっかけるところだったわ。

(...のんちゃん？)

「....幸？」

え、誰？

幸、と呼ばれたその子は綺麗な桃色の浴衣を着て、栗色の髪を巻いたThe 女の子。
こういうときに女の勘ってあるんだなと思うけど、これは間違いない。元カノってやつだ。

(久しぶりだね、元気だった？)

「おん、お前は？」

(ふふ、私も元気だったよ)

美男美女、そうすれ違う人が声を漏らすくらいお似合いな二人。
会社帰りの着崩れたスーツに崩れたメイクの私とは大違い。
あーやばい、めっちゃ萎える。

(...後ろは彼女さん？)

『違います、ただの同期です』

「は？」

『あ、何だったら二人でまわれば？私そろそろ帰ろうと思ってたし。荷物持ちありがとう小瀧。じゃ、また会社でね』

頭1つ分上にある小瀧の表情を伺うのが怖くて、小瀧が持っていた焼きそばとフランフルトを強引に奪い、人混みをかき分けて出口へと向かった。
お持ち帰り用にして貰って良かった。追いかけてこないよな、そりゃそうだ。

あーあ、これ会社で会うの気まずいなあ。どうしようかな。
そんなことぐるぐる考えながら温くなったビールに口を付ける。
全然味しない。美味しくない。

もしかしたら今頃より戻そうなんて話ししてるのかな。
今日の夜中には別れようなんて連絡くるのかな。
そうしたら分かった、ってそれだけ返信してやけ酒しよう。
撮りだめた金ローみながら呑もう。

うん、大丈夫。きっと大丈夫。
そうだよ、元々小瀧と私なんて釣り合わないもん。

『はーあ！付き合ってたことなんて夢だったのかな！』

俺ら付き合わへん？って言われたのも、同期会二人で抜け出して後から皆にいじられたのも、全部全部...

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