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「おとん、おかん、話がある」
そう言って初めて俺は両親に頭を下げた。
どうしても忘れられない人がいること、その人にやっと出会えたこと、そしてその人以外と結ばれることは出来ないこと。
驚いた表情のおとんに比べ、おかんは分かっていたという表情で、智洋の好きになさいと言ってくれた。
彼女の家柄は見合い写真のお嬢様たちに比べて決して良くはないが、確実に彼女たちよりも教養と端麗さはある。
胸を張って彼女に交際を申し込めることに喜びを感じ、彼女の元へ車を走らせた。
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花屋に着くと、ブーケを作る彼女の姿が見えた。
その表情は柔らかく、とても美しい。
「Aさん」
『・・・智洋さん?どうされたんですか、そんな正装で』
花を手にこちらを見る彼女は無駄に整えた服装に驚いていた。
「交際を申し込みに参りました」
『交際?』
"筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる"
「陽成院のように、私の貴方への愛も深いのです。」
"しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで"
『花のように美しく、高貴な貴方様にこんな私が思いを寄せても良いものかずっと悩んでいました』
「身分なんて、私達の間には必要ありません」
『不束者ですが』
そう恥ずかしそうに俯く彼女に、ガッツポーズしたくなるくらい嬉しかった。
感情を抑えきれず初めて抱きしめた彼女の身体はとても小さく、暖かかった。
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『智洋さん』
今も変わらず彼女の静かな声は背筋が伸びる。
『夜中に菓子を摘まむのは身体に良くないと何度も申し上げていますよね?』
「はい・・・」
『そんなにお腹が空くのですか?』
「だって・・・いつまで経っても一緒に寝てくれへんから」
『あ、当たり前です!』
「新婚の夫婦が寝室別だなんて聞いたことないで?」
『余所は余所です』
「そんなに怒るんやったらAさんが見張ってくれればええのに」
『適当なこと言わないで下さい』
「俺は本気やで?」
それに、君が隣に居てくれれば腹は減らんしな?
『何を夜通し食べるおつもりで?』
「なーんや、分かってるやん」
頬を赤らめてパタパタと逃げてしまう彼女への気持ちは今も昔も変わらない。
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作者名:あんまん | 作成日時:2020年10月25日 19時