とある森の妄想族(短編集) (ページ43)

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『...照史？』
「何、してんねん」
『何してるんやと思う？』

掃除されてるはずもない汚い床で、汚い姿で座るあいつの姿は今まで見た中で一番小さく、か弱く見えた。

「なんで、そんな、格好...」
『ちょっと、この前の学祭のロミオ役まだ抜けてないん？辿々しいな』
「それよりも誰にやられたん？なんですぐ電話せんかったん！？」
『耳元で叫ばんといてや、煩いわ』
そう笑うのがやけに悲しくて、寂しくて

『何、なんで照史がそんな顔すんねん...』
涙が出そうやった。
「なんで、すぐに電話せえへんかったん？こんな、姿になるまで...」
『申し訳ないやんか、彼氏でも、ないのに...』

彼氏でもないのに？
彼氏やったら電話してくれたんか？

嘘つけ...
言わなくても分かってる。
こいつのことなんか。

『ちょ、照史まで汚れるからっ』
「黙れ、じっとしてろ」

何年ぶりやろか、こんな風に抱きしめるの。
公園でお前が転んで泣いた時？
オカンと喧嘩して家出した時？

「怖かったやろ...すぐ見つけられんでごめんな」
手ぐしも通らんくらいボッサボサになった髪を撫でると静かに泣き出すのが分かった。
「電話、してくれへんかったん、結構傷ついたで？」
『それでも、見つけてくれたやんか...っ』
「せやけど、守れんかったやろ」

『.....照史』
「ん？」
『ありがと、来てくれて』

そう言って俺の肩に顔を埋めるのは、恥ずかしい時に良くやるこいつの癖。

「もし、俺が彼氏やったら、すぐ電話した？」

『.....ん？』

「さっき言うたやんか」

あ～！あれはボケやんか！とまた下手くそな作り笑いをする。

「じゃあしてや。.....お前の彼氏に」

『え？』

「好きや、お前に頼られるのも、お前をかっこよく助けるのも、お前を慰めるのも、全部。
　お前のことも、ずっと」

それが彼氏の特権なら、俺を彼氏にしてくれと。

『好き、なん？私が？』

「何遍も言わせんな」

どうでも良いときは鬱陶しいくらい電話してくるのに、いざと言うときには遠慮するアホで、ドジでマヌケなこの幼馴染みが

俺はどうしようもなく好きや

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