気にくわなかった同期(橙) ページ28
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『ちょっと桐山ァ！！！！ここはこうしてって言ってるじゃん！！何回言ったら分かんの！！』
「はぁ？ええやんか、別に分かれば」
"きっちり丁寧に"な東京育ちのコイツと"感情でスピーディーに"な大阪育ちの俺は入社当時から気が合わず、会社の中でも中堅の立ち位置になった今でも毎日のようにお互いの馬鹿でかい声を部署に響かせている。
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(いきなりでごめんなんだけど、結婚します！)
(おおー！！！)
送別会で発表された部長の結婚。
同僚達も声を上げて祝福していたし、俺もカッコよくて憧れの部長の結婚は嬉しかった。
ふと、隣の机のアイツを見るとあからさまに時が止まっていて、あれ？とは思ったけどそんなに深く考えてなかった。
それから仕事をしていてもアイツの馬鹿でかい声は聞こえないし、なんなら気配消してんのかってくらい顔を合わせなくなった。
(桐山先輩、A先輩ってなんかあったんすか？)
「え？いや、知らんけど」
(なんか送別会から雰囲気おかしいですよね)
おい、後輩にまで心配されてんぞ。お前らしくないやんけ。
ちょっとモヤッとしつつもアイツもいい大人やし、ほっとけば何とかなるやろ。
「ほい、これ次の会議の資料」
『あー、うん...あのさ！！』
「なんや」
『今日、飲みいこ...』
「お？おお...わかった」
珍しいなと思いつつも定時で仕事を終えた。この時はまさかこうなるとは...
『だぁかぁらぁぁ！！！部長が好きだったの〜〜！！』
うぇぇぇんと漫画で描いた様に声を上げて大粒の涙を流す同期。
「分かった！分かったから！な、落ち着けって！」
『分かってなあい！もう無理生きていけない〜〜ッ』
いつもの半分くらいの量しか飲んでないのに酔いが回っている。呂律は回ってないくせに。
「ほんま、30歳にもなって飲み屋で泣くなよ...恥ずかしくないんか？」
『恥ずかしいから桐山誘ったんじゃんか...こんな姿他の子には見せられない...』
そうか、俺ら今では唯一の同期同い年か...。
「そんなに泣くならせめて告白くらいはしたらええんちゃう？」
『馬鹿。そんな簡単に言うな』
「おい関西人に馬鹿っていうな」
デカいため息をついて突っ伏したかと思うと、
「え、嘘やろ」
ものの5分ほどで寝やがった...。
「おい、おい！俺お前の家知らんぞ！」
どんなに目の前の頭を揺すっても持ち上げても起きない。あかん、爆睡や...。
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作者名：あんまん
| 作成日時：2020年10月25日 19時
