雫 *shizuku* -Kazunari- 第２章【8/24おしらせ更新】 (ページ3)

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タクシーはやがてマンションが立ち並ぶ物静かな路地に差し掛かり…

見慣れた建物が目に入ってきた。

『すみません、次の路地のあたりで止めてください』

そう私が声をかけると、運転手が頷きながら返事をする。

ハンドル脇のメーターにチラリと視線をやり、

バッグから財布を出そうとしたら、

「いいよ、俺が払うから」

そう言って二宮さんの右手が私の手首を掴んだ。

『でも、さっきも出して頂いたし…』

「いいんだって。

そういうの、女の子は気にしないの」

『…だけど……』

静かにブレーキのかかった車体。

そして、左のドアが開く。

「ほら、降りな」

先に足を下ろした二宮さんが振り返って私を促す。

『ぁ、はい…』

とりあえず彼に続いてタクシーを降り、もう一度財布に手を掛けたけど

「俺、受け取んないよ」

サラリと口にする二宮さんが私の顔を覗き込むように近づいた。

『…っ、…』

「楽しかった？」

彼の声が響くのと同時に僅かに香ってくるアルコールの匂い。

あまりにも近い距離感に、鼓動がバクバクと音をたてる。

『…え、と…』

「今日楽しかったか？って聞いてんの」

『………はい』

最初のあたりのことは緊張であまり覚えてないけど、

飾らない彼の話術が私の気持ちを解してくれたのは事実だ。

「ならいい」

ふふっと満足げな笑みを浮かべた二宮さんは、左の掌をポンと私の頭に乗せる。

トクン…

一際大きく胸が跳ねた…

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