雫 *shizuku* -Kazunari- 第２章【8/24おしらせ更新】 (ページ2)

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どれくらい走っただろうか。

タクシーはネオンの眩しい街の中心から離れ、マンションの立ち並ぶ住宅街に差し掛かった。

…………

……ぁ……

この辺りって…

それは、私の脳内にハッキリと記憶がある場所。

あの日の冷たい雨が蘇り、思わずゴクリと息を飲む。

私だけじゃない。

もしかしたら二宮さんも覚えているのかも…

フロントガラスに向けていた視線をゆっくりと左へ動かすと、

『……、っ…』

ずっと窓の外を眺めていた彼が私に焦点を合わせていた。

「………」

何か言いたげな瞳が揺れている。

でも、口を開こうとはしない。

『…、……』

トクトクと鼓動がスピードを上げていく。

緊張から口の中が乾いてきて、キュッと唇を噛んだ時

「何も聞かないから…」

隣に座る私だけに聞こえる小さな声で、二宮さんが呟いた。

『ぇ……』

「話さなくていいよ、別に」

言い方はぶっきらぼうだけど、その声はとても温かく感じる。

心の中に押し込めてある気持ちを見透かされたことに、

胸の奥がキュッと締め付けられるような気がした。

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