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前向きな結論に至ったところで、だいぶ日も翳ってきたので、そろそろ帰ろうかと声をかけ、立ち上がる。
バサバサとレジャーシートの砂を落とすのを手伝ってくれながら、斎藤くんが言う。
「Aさん、ありがとうございました。」
「んー?」
「なんかスッキリした。」
「そう?」
「うん。海、良いね。」
「でしょ?」
「うん。凄く良い。」
「大概のことは、海がどうにかしてくれるからね。」
「そうだね。オレ、釣りとかやってみたいな。」
「釣りねえ、ここは海水浴場だから無理だけど、海釣りができるようなところもあるよ。」
「今度は釣りとか行ってみたいな。」
そう言って、ようやくいつもの顔で笑った。
「あれ?前に乗るの?」
「うん、だってドライブでしょ。」
車に戻り、当たり前のように助手席のドアノブを掴む斎藤くんに驚いて声をかけると、ケロリとした顔で答えが帰ってきた。
「いや、君、今までさんざん後ろに乗ってたじゃん。」
「それはまあ、荷物もあるし、いつもイキナリだったから。けど、ドライブを満喫するには、やっぱ助手席かなって。ダメ?」
「いや、勿論良いけど。」
「じゃ、失礼しまーす。」
すっかりいつもの調子を取り戻し、笑顔で乗り込んだ斎藤くんを助手席に座らせ、ようやくドライブらしいスタイルで発進した。
「この道、すごいね〜。ずっと海沿いを走れるんだね。」
「Aさんて、この辺の出身なの?」
とか何とか、行きとは打って変わって賑やかな斎藤くん。気晴らしできたようで本当に良かった。
高速に乗り、いつのまにか静かになった助手席に目をやると、信じられないことに、この短時間で彼は眠りについたらしい。
おいおい、ドライブ満喫するんじゃなかったの?
すうすう寝息を立てる自由な生き物を横目に、思いがけず充実したこの半日を思い返しながら、静かに車を走らせた。
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星宵(プロフ) - そらさん» はじめまして。嬉しい!ありがとうございます。本質は変わらないと思うけど、今みたいに責任ある立場ではない分、学生時代のギタボ氏は、より無邪気で感情に素直だといいなぁと思いながら書いてます。これからもよろしくお願いいたします。 (2020年10月24日 11時) (レス) id: 5d266fa98e (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - はじめまして。無邪気でかわいくて、すごく癒されてます(^^)ひっそり更新楽しみにしてます…無理なさらず(^^) (2020年10月21日 21時) (レス) id: 70b1605356 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星宵 | 作成日時:2020年10月13日 12時