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「あれ?そちらも、同僚の方かな?」
「、、あの、修平さん。私も今夜は、、」

事情を説明しようとした私を斎藤さんがそっと遮る
「良いよ、俺今日はこのまま帰るから。」
「え?」
「お仕事関係の方でしょ?そもそも俺が突然来たんだから気にしないで。」
「でも、」

そう囁き、大人の対応で立ち去ろうとする斎藤さんを引き留めるべきか悩んでいると、
修平さんが声をかけた。

「良かったら、あなたも一緒にどうですか?
知り合いに美味しいお店を教えてもらったから、ご馳走しますよ。」
「え?」

「僕、神戸でクラフトビールの会社をやってるんです。」
「、、はい。」
「今週は関東にご挨拶回りで。
今日は美味しいものを食べたい気分で誘いに来たんやけど、
営業部の人は皆さん帰っちゃってて沢入さんしかいないし、
二人より三人の方が色々注文できて楽しいと思うから。」
「いえ、それは申し訳ないんで。」

即座に断ろうとした斎藤さんだったが、
修平さんが左手に提げた紙袋に目を止めると、驚いた顔をした。

「、、あ!神戸でクラフトビールって、もしかしてその袋のマークの?」

「ええ、そうです!あれ、うちのビール、知ってくれてるんですか?」
「はい、前に沢入さんに教えてもらって。めちゃくちゃ美味しいですよね。」

「ありがとう。へえ、、、沢入さんから?」
「はい。」
「、、、それは、嬉しいなあ。じゃあ、やっぱりあなたも一緒に行きましょ!
ビールの感想も詳しく聞かせていただきたいし。」

「ええ?僕のですか?」
「うん。彼女はいつもうちのビールを褒めてくれるんやけど、
言うても取引先さんやからねえ。一般の方の忌憚のない感想をぜひ!」

そんな風に笑顔でぐいぐい押されては斎藤さんも断れず、
不思議な組合せで食事に行くことになった。


突然の成り行きだったし、斎藤さんの職業のこともあって少し不安だったけれど、
修平さんが取引先に教えてもらったというスペイン料理のお店は、
照明も薄暗く、程よく混んでいるおかげで、斎藤さんに気付く人は無さそうだ。

修平さんも、『音楽関係の仕事をしています』という簡単な説明に、
一瞬考えるような素振りを見せただけで、それ以上詮索することはなかった。

料理は美味しく、ビールの知識が豊富で気さくな修平さんと、
頭の回転が早くて聞き上手な斎藤さんとの会話は弾み、楽しく時間が過ぎて行った。

だから、私はすっかり安心しきっていたのだ。

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星宵(プロフ) - さばさん» はじめまして。嬉しい言葉をありがとうございます。決めていた所まで書くことができたので、ここからは少しゆっくりペースで、お付き合いが始まってからのあれこれを書きたいと思います。引き続きよろしくお願いします。 (2020年7月26日 7時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
さば(プロフ) - はじめまして!いつも更新楽しみにしており、完結してしまうのは少し寂しいです、、、短編のお話楽しみにしてます!! (2020年7月25日 18時) (レス) id: 640aa79d81 (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みもりさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。そろそろ終盤なので、このままの勢いで進めて行きたいと思います。 (2020年7月16日 9時) (レス) id: 9647d822be (このIDを非表示/違反報告)
みもり - 更新ありがとうございます!!!今回も面白かったです!!! (2020年7月15日 21時) (レス) id: 1232f9590f (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みちさん» はじめまして。更新が滞り返信も遅くなってしまい、失礼しました。良かったらまた読んでやってください。 (2020年7月6日 23時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星宵 | 作成日時:2019年6月11日 22時

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