静謐甘ビール抒情

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結局、夜中まで話し続け、さやちゃんはソファーで仮眠を取った後、8時過ぎに帰って行った。
今日は朝から美容院を予約しているらしい。

私は、昼まで待って斎藤さんにLINEした。
「先日はありがとうございました。
次回ですが、24日の月曜日はいかがでしょう？」

散々悩んで一見何の変哲もない短文。
『24日』の3文字に気後れするけど、勢いで送信する。

30分程で電話が鳴った。

「はい」
「連絡ありがとう。ごめんね、24日は先約で無理なんだ」

「、、そうなんですね」

、、NOの方だ。

どうしよう。諦めなきゃ。
でも、どうやって、、？

覚悟していた筈なのに動揺して言葉が出ない私に、斎藤さんが続ける。

「ごめんね。その日は仕事で大阪だから、、。」
「え、、お仕事なんですか？」
「うん。さすがに当日東京に戻るのは無理なんだよね、他の日でも良いかな？」

そうか、、お仕事なんだ、、。
とりあえず、今すぐ諦めなくても良いことだけが判り、ほっとする。

「あ、勿論大丈夫です。こちらこそ、すみません。ええと、じゃあ、いつにしましょう？」
「予定が入ってない日は、、」

お互いに候補を出し合ったが、クリスマス前は私の仕事が忙しく、
年末にかけては斎藤さんの予定が詰まっていて、
結局、次回は年明けということになった。

「そういえば気になってたんだけど、この前会った日って、Aちゃんの誕生日だった？」
「はい？」
突然の質問に驚く。

「後輩さんに、お誕生日デートがどうのって言われてたでしょ？」
「あ！」

あの時のやり取り、やっぱり聞こえてたんだ、、。
どうしよう、何か変なこと言ってなかったっけ？
あの時点ではさやちゃんは何も知らなかったんだから大丈夫だよね、、？

「そ、れは、、あの日じゃなくて、あの週の火曜日で、、。」
「そうなんだ？」
「、、はい。」
「そっか、じゃあ次回お祝いしなきゃ。やっぱ豪勢にカニ鍋にしちゃう？」

「いや、そんな、お祝いなんて、気にしないでください。
、、あ、でも、、、カニ鍋は食べたいです。」
「あはははは、良いね、その答え。
じゃあ、店は俺が決めて連絡するね。」
「、、はい。」

落ち着かない気持ちのまま通話を終えた後、
どこか違和感を感じて今のやり取りを思い返した。

「あ！！！」

この前の宣言どおり、さらりと名前で呼ばれていたことに気づいた私は、
両手で頬を押さえてソファに突っ伏す。
計算なのか天然なのか判らないけど、この人は絶対モテる人だよ、さやちゃん、、、。

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