3-10 ページ29
確かに、最初から『この人が好き』と思って始まる恋は多いが、
付き合いが深まる中で、少しずつ相手を見る目も変わって関係が変化するのも、普通といえば普通だ。
それなら、この気持ちに後ろめたさを覚える必要はないのかもしれない。
「でも、それこそ、彼女とかいるんじゃないかなあ。」
「まあ、その可能性はゼロじゃないですけど、、。」
私にブレーキをかけるもう一つの理由。
私生活の全く見えない斎藤さんに、お付き合いをしている人がいる可能性は充分にある。
「だって音楽してる姿も『めちゃくちゃカッコ良い』んでしょ?それに何か、天然っていうか、本人意図せずにあちこちで好かれてそうっていうか、、。」
「そうですけど、彼女とかいるのに一対一でビール飲むような人じゃないと思うんですよね。」
「それは、、、さやちゃんのイメージでしょ?」
「、、はい。ミュージシャンの恋愛事情は殆ど表に出てこないですし、あくまでもイメージですけど。」
「だよね、、こればっかりは本人に聞くしかないもんね、、。」
「そうだ。今、ちょうどクリスマス前じゃないですか。
せっかく誘い合える関係なんだから、24日に誘ってみたらどうですか?
さすがに彼女がいたら断るでしょ?」
「ええ?クリスマス?、、、その日に誘うのはハードル高すぎない?」
「だってビール仲間なんだから、ごはんに誘うこと自体は普通でしょ?」
「それはそうなんだけど、、こっちの意図が丸わかりっていうかさ、、。
その結果、いきなり撃沈もありえるってことでしょ、、。」
「う、それはまあ、、。」
私の指摘に、さすがのさやちゃんも二の句が継げない。しばし訪れた沈黙の中、ちびちびビールを飲みながら、「でも」と思う。
でも、悪くない案だ。
誘った結果、OKなら、彼女がいる可能性は低くなり、安心して想いを深めて行ける。
NOなら、、、言うまでもなく、撃沈。
思いを自覚したばかりで辛すぎる展開だけど、もし斎藤さんに彼女がいるのなら、早く判った方が良い。
彼女がいる人と二人きりで会い続けるのは、私の性分に合わないから。
「さやちゃんの言う通りかもね、、。うん。誘ってみるよ。」
「ほんとですか?」
「うん。その結果撃沈したら、さやちゃんが慰めてくれるでしょ。」
「、、、はい。でも、そんなことにならないよう祈ってますから。OKだったら、次はうちで飲みましょう!」
「ありがとね。」
ビールを掲げて優しく笑う可愛い後輩に感謝しながら、私も缶を掲げた。
105人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星宵(プロフ) - さばさん» はじめまして。嬉しい言葉をありがとうございます。決めていた所まで書くことができたので、ここからは少しゆっくりペースで、お付き合いが始まってからのあれこれを書きたいと思います。引き続きよろしくお願いします。 (2020年7月26日 7時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
さば(プロフ) - はじめまして!いつも更新楽しみにしており、完結してしまうのは少し寂しいです、、、短編のお話楽しみにしてます!! (2020年7月25日 18時) (レス) id: 640aa79d81 (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みもりさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。そろそろ終盤なので、このままの勢いで進めて行きたいと思います。 (2020年7月16日 9時) (レス) id: 9647d822be (このIDを非表示/違反報告)
みもり - 更新ありがとうございます!!!今回も面白かったです!!! (2020年7月15日 21時) (レス) id: 1232f9590f (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みちさん» はじめまして。更新が滞り返信も遅くなってしまい、失礼しました。良かったらまた読んでやってください。 (2020年7月6日 23時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星宵 | 作成日時:2019年6月11日 22時