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「悩ませちゃったお詫びに、今日のお会計は俺がするね。」そんな風に言われ、結局今夜も斎藤さんにご馳走になってしまった。
街はすっかりクリスマス仕様。狭い歩道を縦に並んで歩きながら、昼間雨が降ったせいかいつもより灯りが綺麗に見えるなあ、なんて思っていると、
「あっれ〜??Aさん?」
私の名を呼ぶ声がした。
足を止め見回すと、さやちゃんが道の向こうで手を降っている。
「さやちゃん!」
そういえば、さやちゃんの最寄り駅だった。足を止めると、さやちゃんはパタパタ駆けて来る。
「びっくりした!
珍しく早く帰ったと思ったら、こんなところで会うなんて!あれですか?もしかしてお誕生日デート?」
「え? 違う違う!そんなんじゃないよ。」
慌てて否定する。
「え〜?そんなこと言って、前にいるの、彼氏さんとかじゃないんですか?」
さやちゃんは声をひそめて興味津々だ。困ったなと思っていると、少し前にいた斎藤さんが振り向いた。
「こんばん、、へ? うええ?!」
笑顔で頭を下げようとしたさやちゃんは、秒速で斎藤さんを認識したらしい。聞いたこともない声を上げる。
どうしよう、どう誤魔化そう。
けれど、さやちゃんはそれ以上騒ぐことも、訊ねることもせず、微笑んで斎藤さんに会釈すると、小さく「また明日」とだけ言って帰って行った。
「今のがフェス好きの後輩さん?」
斎藤さんが尋ねる。
「はい。、、分かりました?」
「分かるよ〜。マスクしてるのに一瞬で俺のこと認識する人なんてそう居ないもん。ホントに活発そうな人だね。」
面白そうに笑う。
「『Aさん』て呼ばれてるんだ?」
「はい。」
「何かイイね。俺も呼んでいい?」
「え?」
質問の意味が解らず問い返すと、もう一度聞かれた。
「俺も『Aちゃん』って呼んでいい?」
「ええ?!、、あ、、はい。」
「あ!顔赤い、もしかして照れてる?ふふ、かわいいなあ。」
きっと他意なんてない、斎藤さんの「かわいいなあ」
なのに、私は頬が熱くてたまらない。
必死で手で顔を扇ぐけど、一度上った熱は簡単に下がってくれそうにもなくて。
どうしよう。
気づいてしまった。
ずっと続いてた落ち着かない気持ちの理由。
私はこの人のことを「ビール仲間」よりも、もっと、好きになってしまったみたいだ。
どうしよう、、。
私の反応を面白そうに見つめる斎藤さんに、曖昧に笑い返しながら、とにかく頬の赤さだけでも何とかしたくて、ひたすら顔を扇ぎ続けた。
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星宵(プロフ) - さばさん» はじめまして。嬉しい言葉をありがとうございます。決めていた所まで書くことができたので、ここからは少しゆっくりペースで、お付き合いが始まってからのあれこれを書きたいと思います。引き続きよろしくお願いします。 (2020年7月26日 7時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
さば(プロフ) - はじめまして!いつも更新楽しみにしており、完結してしまうのは少し寂しいです、、、短編のお話楽しみにしてます!! (2020年7月25日 18時) (レス) id: 640aa79d81 (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みもりさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。そろそろ終盤なので、このままの勢いで進めて行きたいと思います。 (2020年7月16日 9時) (レス) id: 9647d822be (このIDを非表示/違反報告)
みもり - 更新ありがとうございます!!!今回も面白かったです!!! (2020年7月15日 21時) (レス) id: 1232f9590f (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みちさん» はじめまして。更新が滞り返信も遅くなってしまい、失礼しました。良かったらまた読んでやってください。 (2020年7月6日 23時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星宵 | 作成日時:2019年6月11日 22時