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「沢入さんは俺の仕事のことを知った時、どう思った?、、怒った、、?」
問いかけに顔をあげると、
不安げに様子を窺うような視線とぶつかる。
あれ、もしかして、、?
もしかして、私が本当のことを知った今でも、続けたいと思ってくれてる?
だったら。
「怒ってなんかないです。全然。
驚きはしましたけど、、」
そう。怒ってなんかない。ただ心配だっただけ。
「驚いたあとは斎藤さんと同じことを心配してました。何も知らない私の方が、斎藤さんは気楽に会えるんじゃないかなって。だから知らないふりをした方が良いのかな、とか、考え始めたら連絡しづらくなって、、」
「うん。」
「ようやく会うことができたけど、やっぱり隠してることに罪悪感があって、変な態度になっちゃって、、」
「うん。」
斎藤さんは、私が言葉に詰まる度、頷いて先を促す。
「だけど、一つだけ斎藤さんの予測とは違うところがありました。」
「え?」
「斎藤さんの職場は、私には未知の世界過ぎて、全く想像がつかないです。想像がつかな過ぎて、意識のしようがないし、引いたりとか、遠慮するとかも考えなかったです。
それに、お仕事のことを知っても、今までの、駅のホームで出会って、新幹線でお喋りして、一緒にご飯食べて、ビールを飲んだ斎藤さんとのやりとりが無くなるわけじゃないし。
だから今までと何も変わらないです。」
ひと息に喋ると、斎藤さんは不思議な表情をしていた。強いて言えば、笑いを堪えているような、ちょっと嬉しそうな、そんな顔。
「そっか。何も変わらないんだ?」
「はい。むしろそんな感じです。」
「ふふ、凄いな、沢入さん。
沢入さんが他の人と同じ反応をするかもって、勝手に決めつけてたのは失礼だったね。ごめん。」
そう言って微笑む。
「なら、これからも『何も変わらない』ビール仲間で居てもらえるかな?」
「もちろんです!」
「じゃあ、改めて乾杯しよう。」
「はい!」
飲みかけのグラスを再び掲げかちりと合わせると、嬉しさと安堵でどうしようもなく頬が緩んでしまう。
緩んだ頬のまま斎藤さんに笑いかけたら、彼はちょっと驚いたような顔をした後、凄く嬉しそうに笑った。
いつもの綺麗な微笑みとはまた違う、
嬉しそうに目を細めてキュッと頬を上げた笑顔。
私は初めて見たその笑顔からしばらく目が離せず、今しがた安堵で落ち着いたはずの心臓はどきどきいうし、頰は熱いしで、どうしていいかわからなくて、ぐいと一口ビールを飲んだ。
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星宵(プロフ) - さばさん» はじめまして。嬉しい言葉をありがとうございます。決めていた所まで書くことができたので、ここからは少しゆっくりペースで、お付き合いが始まってからのあれこれを書きたいと思います。引き続きよろしくお願いします。 (2020年7月26日 7時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
さば(プロフ) - はじめまして!いつも更新楽しみにしており、完結してしまうのは少し寂しいです、、、短編のお話楽しみにしてます!! (2020年7月25日 18時) (レス) id: 640aa79d81 (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みもりさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。そろそろ終盤なので、このままの勢いで進めて行きたいと思います。 (2020年7月16日 9時) (レス) id: 9647d822be (このIDを非表示/違反報告)
みもり - 更新ありがとうございます!!!今回も面白かったです!!! (2020年7月15日 21時) (レス) id: 1232f9590f (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みちさん» はじめまして。更新が滞り返信も遅くなってしまい、失礼しました。良かったらまた読んでやってください。 (2020年7月6日 23時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星宵 | 作成日時:2019年6月11日 22時