あたまいいんだね【syp】 (ページ3)

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今日は、高等部一年に編入生が来たという噂があった。

噂と言ってもそれは本当のことであるようで、廊下で見た事のない生徒二人が先生と一緒に歩いていた。

放課後になれば、鞄に教科書を詰めて、部活に行く。

私が所属するのは弓道部である。

「弓道は心が休まるよ。」

なんて、何度か凪に言ったことがある気がする。

そういえば、編入生は部活見学とか来るんだろうか。なんて思いながら階段を降りていた。

鞄を下ろして、更衣室で服を着替えた。

髪を一つに縛れば、それらしい見た目になるだろう。

そこから、矢を軽く掴んで、的を射る。

風を切る音が頭に響いた。

中心に矢が刺さったのを確認してから、ゆっくりと弓を下ろす。

「すっげぇ… 」

そうすれば、二人分の拍手と、一人の声が聞こえた。

部長は今いないはずなので、誰だろうと思い後ろを振り向けば、廊下で見た編入生二人が立っていた。

『部活見学ですか？』

うちは幽霊部員が多いので入ってくれれば、と付け足してそう言えば、二人の肩がビクリと震えるのが分かった。

「え、あー！そうなんですよ！」

ぎこちない声で返事をしたのは、明らかに見えにくそうなぐるぐるの眼鏡をした人だった。

それは見えるんですか、と訊きたかったが、噂からして高等部一年らしいのだ。

先輩には失礼のないようにしなければ。

「あ、さっきのすごかったです！聞いた噂以上やった！」

噂とは、あの噂のことであろうか。

心当たりのある私は少し嫌な気持ちになった。

きっと、

「弓道部のエースがなんか凄いらしい」

という頭の弱そうな噂のことであろう。

そもそも私はエースではない。

うちの部は幽霊部員が多く、残った部員が部長と私と数人くらいしかいないから、その中からの厳選結果が私というだけだ。

…自分で言っていて虚しい気持ちになってきてしまった。

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