白うさぎのその後。2【名探偵コナン】

Another 16 トリプルフェイス？(salomeさんリク) ページ34

「あら」

「久しぶりね」


ニコリと色気を感じさせる笑みを浮かべて来たのはアメリカにいるはずの灰原哀──宮野志保だった。


「久しぶりね志保。元気だった？」

「ええ。あなたこそ、少し痩せたんじゃないかしら？」

「そうかな。まぁ今はお店忙しいしね」

「そう」


心配するような視線を送りながら志保は頷き、カウンター席に腰を下ろした。


「今日は子供達いないのね」


志保はくるりと店を見渡して呟く。いつも店を手伝っている日向と葵の事だろうと察しはついた。


「今日は火曜日でしょ？今頃学校よ」

「ああ……。そういえば時差があるものね」

「珍しい、志保が間違えるなんて」


普段は賢いのにね。そう言うと、志保は「弘法も筆の誤りって言うでしょ」と小さくため息をついた。


「でもどうして日本に？」


不思議に思って尋ねると、志保はクリップで止められた書類をあたしによこした。


「何これ」

「APTX4869によく似た設計の薬が闇市場で出回ってるらしいのよ。それの解毒剤の開発書」

「……部外者に見せていいモンなの？」


思わず尋ねると、志保はニヤリと笑った。


「あなたはある意味関係者でしょ。元組織のアリスだし」

「いやそりゃそうだけど……ってコードネームで呼ぶのやめてよ。ジンですら今は名前で呼ぶのに」

「ジン？あなたジンと連絡取ってるの!?」

「……あ、」


志保の驚きようを見て、あたしは自身の失言に気づいた。


「……オフレコでお願いします」


そう拝み倒すと、目の前からは険のあるため息がこぼれた。


「……今回だけよ」


犯罪者とはいえ、今は良き話し相手である。
そこを察して見逃してくれるあたり、志保はやはり優しいのだ。


「ありがと」


あたしはお礼も兼ねて、いつもより念入りにコーヒー豆を挽いた。



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