ゆっくりでいい ページ12
少しだけ夢を見た
それは何とも言葉にし難い夢で
柔らかな空気の中に冷たさもあり
少しだけ胸が締め付けられるような感じがする
そんな曖昧な景色の中で人影を見つけた
近付くとそれはあの少女だった
ボロボロの着物。綺麗な濡場色の髪は固まった血やらでボサボサしている
瞳は酷く濁っていてその姿は初めて会った
"あの日の少女"
「大丈夫か」
そう声をかけたが少女は動かない
傍によって少女の血と土で汚れた手を握ってやる
温かさを感じたのか幼い濁った瞳から大粒の雫が零れ始めた
すると景色は変わっていてあの山の中
麓に下りる途中の景色だった
歩き始めた少女に歩幅を合わせてやる
すると少女は喋りだした
『私はこれからどうなるの』
「山の麓の屋敷に預ける」
その言葉に少女は歩みを止めた
地面を見つめて震えている
『私は汚い…何処にも行けない…きっとまた…』
そう言って震える少女はどこかで見た事がある
姉を、親友を、友を失ったあの日の幼子
青年は質問する。
「生き残った事に罪悪感を持っているのか」
それはまるで自分への質問のようだった
答えは分かっているが言葉は止まらなかった
少女は静かに答える
『違うの、生き残った事に喜びを覚えてしまったの
本当なら罪悪感を持つ筈なのに、私は、私は』
少女は青年とは違い罪悪感を持っていない事を悔いていた、そして生き残れた事を喜んだ自分を咎めている
あの日と同じ質問と答え
己を恥じて悪夢に苛まれる少女にあの日の自分は何も声を掛けてやれなかった
青年自身も己の中の影とケリをつけれていない
人に言える立場じゃないなと少しだけ自嘲しながらも少女の前に膝まづいて手を握ってやる
「大丈夫だ」
そして夢はさめた。
自分の手を握る少女はあの日の事全てを覚えていると言った
そして乗り越えられていないと告白してくれた
青年は少女の手を握ってやり優しく微笑んで告げる
「大丈夫だ」
それは夢の中の少女に言った言葉であり
自分自身への言葉でもあった
青年の言葉に少女は小さく笑いだした
突然笑いだした少女に困惑しながらも微笑む青年だった
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しづ(プロフ) - 、さん» 外したつもりが出来てませんでした…ありがとうございます! (2019年12月15日 16時) (レス) id: 14c6efd9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しづ | 作成日時:2019年12月15日 14時