不死川さんと町娘

夜中 ページ32

ふと目が覚める
見知らぬ天井

ちらりと横を見れば少女が眠っていた


ああそうか、と順を追って思い出す


何を思ったのか俺はここに来てしまった

鬼殺の剣士である不死川実弥として家に来てしまったと後悔する


だがあの時は最早考える余裕などなかった
恐ろしい程の虚無感


今はだいぶ落ち着いている

あぁ、仕事もサボっちまったと一人ため息をつく


すやすやと寝息を立てる少女に申し訳なくなった
迷惑をかけてしまった
今までこんな事無かったのにと
目を伏せる


すると少女がふと目を覚ます

ぼーっと俺の顔を見るとふにゃりと笑った

『実弥さん…』


「迷惑かけちまってすまねェ」

軽く頭を撫でるそれが心地良いのか
その手に擦り寄ってくる少女
なんだか猫を撫でている気分になる


『いいんですよ…落ち着いたなら良かったです』


猫の癖に話すんだなと少し笑う


すると少女はもう。とそっぽを向く


だがまた撫で始めると目を細めふふふと笑いだす


かわいいと思い一時なでながら言わねばならないと腹を決める不死川



「俺は軍人じゃねぇ、鬼狩りだ」

そう言うと彼女は一瞬きょとんとした顔をした

『軍人じゃないのは分かってましたが…鬼狩りって職業は初めて聞きました』


なんだ軍人とゆう嘘はバレてたのかと
意外と鋭いんだなと彼女を見やる
そして続けて言う

「鬼狩りは政府に認められてねぇ、だから公式の職業って訳じゃない。鬼と化した人を斬る奴らだ」


俺はそれなんだと伝えると少女は鬼っていたんだと感心している。
なんでもおばあちゃんにその様な話は聞いた事はあるが本当の事だとは知らなかったと言う。
まぁそれが普通だ。
知ってるのなんかごく一部の人間だけだ


『じゃあ今日着てた服についてた血も鬼の？』


なんて答えたらいいか迷った
だが嘘をつくのはやめようと決めた

俺は正直に話した。助からない人間の首をはねたと。


すると少女は俺の手を取り両手で挟んだ

それを悔やんでいるのですか。と質問され

俺は分からないと答える

あれが正しい判断だったかは分からない
もしかしたら助かったのかもしれない
俺は助かる人を殺 してしまったのかもしれないと

そう言うと少女は俺に言う

『その男性は実弥さんに願ったのです
そして 実弥さんは彼の願いを己の手を汚してでも叶えてあげた、貴方は本当に優しい方ですね」


心の闇が少しだけ晴れた
ああ、なんて凄いんだこの少女はと
目を見開いて彼女を見つめる不死川であった

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