不死川さんと町娘

夢もつかの間 ページ27

その後、不死川はまた後でと言い

屋敷に戻る


湯浴みをし布団に入り目を閉じる


まだ心は陰っている
だがいいんだ、今はこれで
心に嘘をつく、自分はこれで満足だと


だが心の奥は違った

満足などしていない
満たされるわけが無い


だが不死川はそれを無かったことにした


そして昼になった。

いつもの様に彼女の家に向かう


今日は垣根から見らずに直接玄関から入る

ガラリと開けると彼女は台所に立っていた

そしていつもと変わりない笑顔で優しく言う

『おかえりなさい』と

不死川もいつもの様にあぁと声に出す


だが今日は勇気を出した

「ただいま」

そう言ったのだ、少女も驚いていたが直ぐに笑顔になりさぁ、上がって！

そう言うのだった


履物を揃え、家に上がる


今日は肉じゃがだ

ほうれん草のおひたし。漬物。吸い物


そして二人でいただきますとゆうと
黙ってご飯を食べる


なんだか今日は会話するよりこの二人の時間を楽しむようだ

少女はチラリと時々目を合わせてきてはそらしまた目を合わせてくる
不死川も目が合うとそらしの繰り返しでお互い、相手にバレないようほくそ笑むのだった

だが飯時だ、俺はちゃんと食えと言うと
はーい。と少女はパクパク食べ始める


ご飯を食べ終えたら俺が率先して皿を洗いに行く

少女も後ろからついてくる


カチャカチャと洗っているとまた
横からじーっと少女が見つめてくる

いつもの癖でなんだァと聞くと

少女はなんでもないですとふふふと笑っている


幸せだと不死川は感じた、だがそれも一瞬の事だった


カァカァと鎹鴉の声がする


俺は少し厠へ行くと嘘をついて
少女を残し鴉の元へ行く


「風柱殿ォ任務デアル！東ノ街ニテ鬼ガ大量二出没！街ガ落チル！！緊急デアル！！」


そう言われ俺は少女の元へ走る


「っ…仕事が入ったァ、行ってくる」

そう言うと少女はわ、わかったと驚いていた

多分俺の顔がいつもと違ったからだろう


直ぐに屋敷に走り刀と羽織を纏い
東の街に向かう


急がねば全滅してしまう緊急事態


目にも止まらぬ速さで山を駆け抜ける不死川であった

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