悲しい夢、幸せな夢 ページ26
不死川は朝日を背にゆっくり歩いて帰る
あの疑問の答えはまだ出ない
もやもやしたまま帰路に着く
少女はきっと今日も縁側で待っているのだろう
不死川は宇髄に言われた言葉が忘れられないでいる
呑気に嫁だの、恋仲だの
自分の立場を、ちゃんと考えいなかった
俺は鬼殺の剣士
鬼を滅殺する為に剣士になったのだ
お館様を守るため。
いつ命を落としてもおかしくないのだ
お館様の為ならばこの命も差し出せる
そんな自分が、この鬼を、時に鬼とも言える人を斬ったこの血に汚れた手で彼女の手を取り
幸せな未来を望む事は許されないと
足の先からジワジワと冷たい何かが心臓まで来る
この感情の名前がわからない
ただ分かるのは心になにか暗い影がさした
そんな事を考えていたらついてしまった
大切なあの少女と出会った場所に自分はまた立っていた
目を伏せていたがしっかり前を見据える
今日の少女は違った
いつもなら縁側に腰掛けて此方に微笑みかけるのに
今は垣根の外、道に立っている
家の外で待っていてくれたのだ、いつもより遅い自分の帰りを
不安そうに自分の顔を覗きながら
頬に手を伸ばしてくる
『どうしたんですか…?』
優しく柔らかな手が頬を撫でる
その手を取り自分の頬に彼女の手をしっかり押し付ける
彼女はまだ不安そうな眼差しを向ける
安心させたいのに、言葉が出ない
こんな時、気の利く言葉を出せる男であったら
こんな思いをさせずに済むのだろうか
様々な思いを出せずにいると少女は一言言った
『色々あったんですね…おかえりなさい』
少女は優しく察してくれた
あぁ、そうだ今はこれで十分じゃないか
笑ってしまうがまだ少女とは何も始まっていないのだ
未来の事など考えて意味が無い
不死川は少女の瞳をまっすぐ捉え頬を緩める
そして一言
「遅くなった、ただいま」
少女は笑った
青年も笑う
夢が覚めるの事を知らぬ子供の様に
ただただ互いの瞳を見つめ合い笑うのだった
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花帆 - 完結おめでとうございます! 垣根の外からの出会いや、不死川兄の夢主さんへの対応や感情の変化が本当に可愛くて、微笑ましいです(*´ω`*)温かい気持ちになれるお話で面白いです!!すごい良かったです!番外編もあったら拝読したいぐらいです♪ (2019年9月12日 4時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
深紅 - ほんわかとした雰囲気がとても癒やされました。新作も楽しみにしてます。 (2019年7月30日 21時) (レス) id: d50d29b004 (このIDを非表示/違反報告)
あい* - 最高すぎます…やばいしんどい…(語彙力)すごい好きでさこの小説…!!! (2019年7月25日 10時) (レス) id: 65f8b55b72 (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - うおおおおお、語彙力とはこの事を言うのですね。好きです。2時間かけて読みましたがとても貴重な時間になりました泣有難う御座いました!! (2019年7月25日 2時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
ねこずな(プロフ) - ウオオめちゃくちゃ良いお話です!不死川さんめっちゃキュンキュンしますー! 新作も楽しみにしてます!! (2019年7月13日 5時) (レス) id: f038d3e1b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しづ | 作成日時:2019年7月9日 2時