痕 ページ28
MG side
｢これ…なに…？｣
Aヒョンの白く細い綺麗な腕にくっきりと残る、痛々しい火傷の後。一体どうしたらこのような跡が残ってしまうのだろうか。
A｢まあなんていうか、コレも過去の勲章みたいな？｣
そう悲しそうに笑いながら俺の手をそっと払い除けるヒョンに俺は何も言えなかった。本人は笑っているつもりだろうが顔は僅かに引き攣ってる。
ヒョンが前の事務所を辞めた理由と何か関係があるんだと直感的に理解した。
だが、どこまで踏み込んでいいか分からずやっとの事で絞り出した言葉なんて在り来りも在り来り。
｢痛い…？｣
痛くないわけないよな、と内心では感じつつも聞かずには居られなかった。
A｢当時はね。今はもう大丈夫だよ。｣
｢そっか…｣
A｢それにもう終わった事だしね！ミンギュがそんな心配することじゃないよ！｣
そう仕切り直そうとするヒョンに思わず言葉が漏れた。
｢え、｣
A｢ミンギュには関係ないよ、だから今見たのは忘れて！｣
｢…なにそれ｣
A｢ん？｣
ヒョンにとっては何気ない言葉だったかもしれない。しかしその何気ない言葉に俺は思わず強い口調が出てしまった。
｢確かに…、確かにAヒョンとはまだ会ったばかりで関わりはまだ短いよ。でも、だからこそ、俺はヒョンとコレから共にこの世界で頑張っていくと約束したからには、ヒョンの事知っておきたい。ヒョンにもう辛い想いはさせないように俺らも頑張るって言ったじゃん…だから、これからも、俺らに着いてきて欲しいから。ヒョンの事もっと知って、理解した上で一緒にこの世界でもっと羽ばたきたい。もちろん、言いふらしたりはしないから…だから、ヒョンの昔の事知りたい。俺はそんなに信用ない…？｣
自分で話していて少し泣きそうになってしまう。
ヒョンの事だから、周りに迷惑をかけたくないと思って抱え込んでるのだろう。そんな心配させまいとする計らいなのは重々承知はしていたのだが、我慢は出来なかった。
俺の言葉を受け、少し驚嘆の表情を見せるヒョン。少し間があき、悩んだような素振りを見せた後何かに納得したようにゆっくり言葉をつむぎ始める。
A｢ありがとう、そうだよね。
じゃあさ、聞いてくれる？
コレはただの昔話なんだけどさ｣
そう躊躇いながら話し始めたヒョンの話は想像を絶するものだった。
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作者名：しゆ | 作成日時：2020年5月17日 2時
