中間淳太×兄妹愛 ページ1
部屋のドアが開く。
足音がカサカサと服を掻き分けながら、ベッドに辿り着く。
ゆっくりと手を伸ばす。
「･･･何」
「なんや、起きてたんか」
「もうちょっとで寝るとこやった」
「邪魔してごめんな」
「･･･なんかあった？」
「こっちのセリフ」
「え？」
「オカンから聞いたで、学校のこと」
「･･････で？」
言わんといてって言ったのに、オカン何バラしてくれとんねん。
「話聞くぐらいやったらなんぼでも出来るけど」
『大丈夫、お前はそんな弱くないやろ』って。
いっつもそれしか言わへんやつが今更なんや。
「･･･別に、話すようなこと何もないし」
「でも、」
「こっちは放っといて欲しいねん」
「抱え込むんが1番良くないし、」
「･･･空気読めよ」
ほんま、成績いいはずやのに察することも出来へんのか。
クソ兄貴と頼りたくなる自分にムカついて、涙が出そうになる。
「･･･っ」
タオルを差し出す人はいないのに、先の尖った槍を持つ人はゴミほどいる。
抉られた傷から血が吹き出すのを笑って眺めている。
伸ばした手を汚れた靴で踏まれて、あるいは見ないふりをされて。
助かるはずの人達もやがて死んでいくんだ。
「よいしょっ」
なんの脈絡もなく聞こえた声と共に、背中に冷気が伝わる。
「ちょっ、と」
「あったかいわー」
「出てって」
許可も取らずに布団に潜り込んできたクソ兄貴が、私の体を抱きしめた。
「何して、」
「大丈夫や」
またそれか、という前に。
「俺がいる」
「は、」
「俺がいる。オカンもいる。オトンもいる」
いつも香水の匂いがプンプンしてるくせに、今日に限って私と同じ匂いがする。
その匂いにまた、胸が込み上げてきて。
「･･･味方なんかっ、だれも、おらんしっ」
「そんなことないよ」
「いっつも、期待にこた、えなって」
「うん」
「できひんくてっ、失望されんのが、いちばん、こわ、かった」
よしよしって、もうそんなに子供じゃない。
そう思いながらも、頭を撫でる手に幼い頃の記憶を重ね、気づけば泣き疲れて目を閉じていた。
「Aは間違ってないよ」
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作者名：しよりん | 作成日時：2019年11月19日 12時
