第二百二十二話 ページ22
「はあ……っ、ふー……」
練習の合間、Aはドリンクを飲みながら息をついていた。やはり選手たちと少し実力に差が出てしまっている気がした。元々練習量が違うために明らかに違いはあったのだが、それが益々大きくなっている気がする。汗を拭いながらAはやはり夜中にも自主練習をしなければならないな、と考えを巡らせていた。
「A、大丈夫か？」
同じく休憩に上がってきたらしい鬼道がAに声を掛ける。Aは頷いて鬼道を見た。鬼道はAほど息が乱れていない、やはりさすがだと思った。鬼道は司令塔として他のメンバーにも指示を出していた。だから、人一倍疲れていても仕方が無いはずなのに。鬼道は凄いと改めて思いながら何気なく彼のマントに視線を落とす。
「あれ、鬼道さん」
Aはその声と同時に鬼道のマントを持ち上げた。彼のトレードマークともいえるマント、そのマントの端が縦に裂けていたのだ。恐らくスライディングか何かをしたときに摩擦で敗れてしまったのだろう。
「破れちゃってますよ、マント……」
「本当だな、取り替えておこう」
鬼道がマントを脱ごうと首元の紐を解く。Aはあっ、と声を上げて彼のマントを持ち上げた。そして鬼道に微笑みかける。
「私で良ければ直しますよ、鬼道さん」
Aは自分の荷物の中からソーイングセットを取り出した。一応嗜みがないわけではないし、この程度の損傷ならすぐに応急処置くらいはできるだろう。鬼道は少し黙っていたが、Aにマントを手渡した。
「じゃあ頼むぞ、A」
「はい」
Aはベンチに腰を掛けて鬼道のマントを広げる。手早く針に糸を通すと手慣れた様子でちくちくとマントを縫い始めた。鬼道もその横に掛け、彼女の手つきを見つめる。
「さすがだな」
「いいえ、このくらいは全然」
五分も経たずに彼女は応急処置を終えた。糸切ばさみで糸を切り、マントを広げる。Aは立ち上がって彼のマントを羽織ってみた。ふわりと鬼道の青いマントが彼女の身体を包む。
「な……」
「ふふ、直りましたよ。鬼道さん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やすけ(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます！レイさんのご要望にお答えしたい気持ちはあるのですが、アレスとオリオンに関しては現在は構想がわかないのでお答え出来ません。ごめんなさい (2019年8月7日 20時) (
レス) id: 605d7b732a (このIDを非表示/違反報告)
レイ - やすけさん、もし良かったらアレスの天秤と、オリオンの刻印を書いてもらえると嬉しいです。 (2019年5月2日 12時) (レス) id: 90c5c7cfce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やすけ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/my_dreamwould
作成日時：2019年4月28日 19時
