☆ ページ22
…
「あれ、鉄人雨がえるじゃなかったっけ？違った？」
「もっとポエムっぽい名前にしたほうが売れるって
言われて、考え直したんだ。
ふたりの思い出とか、、入れるといいらしくて……」
ひかるがあと数センチのところで何か訴えかけてきて、
惑星みたいな瞳に吸い込まれそうになった。あわてて
言葉を探すけど、みんな逃げていってしまったらしい。
何だよチュウするぞ、って茶化そうにも言葉に詰まる。
俺は頭を使って恋したことなんかないから。頭真っ白。
「あーたしかにっ、、女子が好きそうだよなっ」
「…それだけ？」
ピロロロンッ＿＿。
間抜けな電子音に、ふたりで液晶をのぞき込む。
最高入札金額が0から￥1000に上がっているのを見て
ひかるは「ふぅーっ」とテーブルの上のコピー用紙を
吹き飛ばしそうな溜め息を吐いた。
部屋の空気がやっと、空気らしくほぐれていく。
それからは、
入札を告げる電子音が折り重なってうるさいくらいで
ぬるぬると育っていく数字はやっぱり生き物に見えた。
30,100…32,000…35,000…40,000…。
俺はショートケーキを目の前にした女子高生みたいに
だらしない笑顔で、まるで自分のことのように喜んだ。
「ひかる見ろって！どんどん上がってくぞコレ…」
「うーん、、おれはもういいや…」
"お金はどうでもいいんだ" と、ひかるは喉を反らせて
天井を仰いだ。
あの夏の雨上がりみたいに清々しい声だった。
「１人でも”好きだ”って言ってくれたらそれでいい…」
” よかったぁ… ”
ひかるは息を吐くようにそう言って、俺の肩にこてん
と、寄りかかってきた。
スリスリと甘えるような素振りに心臓がリズムを打つ。
肩を抱き寄せようか少し迷って、カーペットを握った。
ひかるのこと、こんなに好きじゃなかったら、もっと
優しい幼馴染でいられたのかな＿＿。
「……おれ、負けないよ…」
ひかるの未だあどけないのに力強い声には、
古い思い出が香水のようにしみこんでいる。
雨上がりのロケットの上、
剥がれるように夕陽が差す公園。
「…ありがと、こうちゃん」
”金なんかどうでもいい” と、会社員らしくないことを
思いながら、ひかるの柔らかいピンクの髪にもたれて
そっと目をつむった。
魔法のピアスがどうか、大切にしてくれる人のもとへ
届いてほしい。あれは、ひかるの
この花のような喜びが、根を張りますように。
☆第５話：やぶさんちのこうちゃん☆
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白米(プロフ) - こんにちは。こちらは薮くんの光への愛が前編ずっと綴られていて、それだけで読んでいて胸いっぱいで。両片想いっていいですよねー。はぁ。途中ハラハラしながらも、最後の幸せそうな二人に私も幸せにしてもらいました。ご馳走様でした。 (2019年11月27日 11時) (
レス) id: 087ee442e3 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 大好きな「失恋作家」の二人に再会できて幸せです。ありがとうございます。再読させていただき、初めての夜に辿り着いた二人を心から祝福したくなりました。一人で見る夢以上に二人の未来はきらきら星のように輝いています。そして、スパダリやぶくんに栄光あれ! (2019年4月11日 11時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
ooota12(プロフ) - はじめまして。流星の詩を歌う光くんに涙してしまいました。しょこるさんの世界観に引き込まれてしまいました。スピンオフの甘々はほっこりするもので大変楽しく読ませてもらいました。 (2019年4月11日 1時) (レス) id: 7038ad089f (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ♪ゆずりんご♪さん» コメントありがとうございます^^オークションのシーンにはやぶのひかるへの愛をたっぷり込めて書いたので心に響いて嬉しいです＊もっと面白いお話、胸キュンするやぶひかが書けるように次もがんばりますっ♪ (2019年1月12日 13時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
♪ゆずりんご♪(プロフ) - 初コメ失礼します。最初から最後まで、光くんと薮くんの恋物語にハラハラしながら読みました。純粋無垢な光くん、それを助けようとした薮くんの「１２５万円！」の叫びに胸が痛くなりました。すごく面白かったです！ (2019年1月9日 23時) (レス) id: 10db15d6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2018年6月8日 21時
