☆ ページ18
…
「一緒に夢見ようね〜って言われて舞い上がってたじゃん」
「それモノマネ？ぜんぜん似てないし、」
「ひかるくぅ〜ん、いっしょに夢見ようねぇ〜っ」
「……やめて。」
ちょっとぐらい舞い上がったっていいでしょ…。
ひかるはすんーとした横顔を見せて、それから俺を睨んだ。
「 やぶが言ってくんないから…っ！」
投げつけられた枕が肩を掠めた。
ひかるの引き攣ったような呼吸の音。「就職するよ」って
報告した冬の日にはじめて聞いて、これで２度目だ。
俺が「ごめん」と言ってしまった途端、ひかるが泣いた夜。
俺達はあの夜から１歩も進んでいない。
「 前みたいに言ってよ…。」
気を失いそうなぐらい辛いけど、ひとつだけ、胸を張れた。
俺が何かで世界ランキングに入ることは一生無いだろうし、
歌で誰かの人生を変える事も、星を掴む事もできないけど、
ひかるの夢を世界で１番、応援しているのは俺だ。
「……うそ、可愛く撮れてる、、」
「だろ？」
ひかるは俺が手渡したスマホを食い入るように見つめた。
幼馴染の可愛いを探求してもう20年。
"適当に"撮ってもハズさない自信があった。
「俺は俺のやり方でひかるを応援するから」
ひかるがゆっくりと立ち上がって、ふたりで棚に置かれた
水色の箱を見た。
「アレいっぱい着けてもらえるといいな」
人魚姫が描かれた箱には魔法のピアス。
ひかるが少しハッとしたような顔をしたから、耳を傾けた。
「…やぶ、あのね、、」
ひかるは胸の前で両手の指先をくちゃくちゃと混ぜている。
「もしピアスが売れて、それで絵も売れるようになって
おれが人気作家になれたら……」
この空気。学生の時に経験した気がするけど思い出せない。
ちらちら、飛んでくる視線がイチゴみたいに甘酸っぱくて
得体の知れない期待感に生唾を飲んだ。
Prrrrrr……Prrrrrr……！
そのとき、ジーンズのポケットで電話が鳴った。
ひかるは丸い目をひん剥いて、ぱくぱく空気を食べている。
「おっ…かかのカメラマンにしてあげるっ！！」
ひかるは謎の言葉だけを残して、階段を駆け下りていった。
頭をぐるぐるさせること、数十秒。
「……あ。”お抱え”のカメラマンか」
電話の相手は雄也だった。
酔って電話しただけの惰性の会話をひとしきり聞いてやる。
「なぁ、雄也の好きな食べ物ってなんだっけ？」
「ママのおかかおにぎり！」
「……だよな。」
ちょっとでも早く会いたくて晩飯も食わずに来たってのに
なぜだか全然、腹が減らない。
☆第４話：おかかのカメラマン☆
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白米(プロフ) - こんにちは。こちらは薮くんの光への愛が前編ずっと綴られていて、それだけで読んでいて胸いっぱいで。両片想いっていいですよねー。はぁ。途中ハラハラしながらも、最後の幸せそうな二人に私も幸せにしてもらいました。ご馳走様でした。 (2019年11月27日 11時) (
レス) id: 087ee442e3 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 大好きな「失恋作家」の二人に再会できて幸せです。ありがとうございます。再読させていただき、初めての夜に辿り着いた二人を心から祝福したくなりました。一人で見る夢以上に二人の未来はきらきら星のように輝いています。そして、スパダリやぶくんに栄光あれ! (2019年4月11日 11時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
ooota12(プロフ) - はじめまして。流星の詩を歌う光くんに涙してしまいました。しょこるさんの世界観に引き込まれてしまいました。スピンオフの甘々はほっこりするもので大変楽しく読ませてもらいました。 (2019年4月11日 1時) (レス) id: 7038ad089f (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ♪ゆずりんご♪さん» コメントありがとうございます^^オークションのシーンにはやぶのひかるへの愛をたっぷり込めて書いたので心に響いて嬉しいです＊もっと面白いお話、胸キュンするやぶひかが書けるように次もがんばりますっ♪ (2019年1月12日 13時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
♪ゆずりんご♪(プロフ) - 初コメ失礼します。最初から最後まで、光くんと薮くんの恋物語にハラハラしながら読みました。純粋無垢な光くん、それを助けようとした薮くんの「１２５万円！」の叫びに胸が痛くなりました。すごく面白かったです！ (2019年1月9日 23時) (レス) id: 10db15d6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2018年6月8日 21時
